研究課題
SMBT-1の脳における定量計算法に関しては、2コンパートメントモデルを用いた解析法やLogan法が適用できることが確認でき、参照領域として小脳白質や大脳皮質下白質が利用可能であることが再確認できた。健常高齢者とアルツハイマー病(AD)症例の比較においては、AD症例集積が高くなる傾向が示されたが、小脳白質で補正したSUVRを用いた場合のほうが両者の差の検出感度が高くなる傾向があることが示された。進行性核上性麻痺(PSP)症例の脳についても調べたところ、小脳白質で補正した場合よりも大脳皮質白質で補正した場合のほうが、PSP症例の中脳および橋の高集積所見が強調される傾向が示された。本研究課題で開発した「全身・脳hybridプロトコル」を実際に用いてパーキンソン病(PD)症例のPETデータ9例を対象として、脳および全身の解析評価を進めたところ、全身に関してはPD症例の心臓と肝臓の集積が相対的に高い傾向を示し、腎臓への集積が低い傾向を示した。ただ、年齢の違いを補正したところ、心臓および肝臓の高集積所見は弱くなったことから、今後の詳細な検討が必要と考えられた。腫瘍研究に関しては、グリオブラストーマ(GBM)、アストロサイトーマ(Ast)、オリゴデンドログリオーマ(Olg)等を含む病理検体にオートラジオグラフィ(ARG)および抗MAO-B抗体を用いた免疫組織化学染色(IHC)を行い、ARGでは上記の疾患間で目立った差はなかったものの、IHCの視覚的評価ではGBMのうち多くで強陽性となることがわかった。Ast、Olg症例では陽性例が見られたものの、強陽性はみられなかった。全身・脳hybridプロトコルの検証ができ、全身所見が健常者と一部の神経変性疾患患者では異なっている傾向が示された。また、腫瘍診断におけるSMBT-1の有用性も示唆され、引き続き検討が必要であると考えられた。
3: やや遅れている
所属研究施設の事情により、PET装置の全体の稼働回数が急遽削減されることとなり、「脳研究」と「全身研究」のPET測定において、当初予定していたシフト数を確保できなくなってしまったことが大きな原因となっている。
本研究で開発した「全身・脳hybridプロトコル」を使用して、引き続き、以下の応用的臨床研究を進める。①Parkinson病と喫煙研究では、非喫煙健常人、喫煙健常人、非喫煙PD患者、喫煙PD患者を対象とする。②コンタクトスポーツ選手の研究ではコンタクトスポーツ歴10年以上の選手で慢性外傷性脳症[CTE]の疑いがある者を対象とする。③MAO-B阻害薬の薬物負荷研究では、健常者を対象としてMAO-B阻害薬ラサギリンとサフィナミド負荷の影響を評価する。また、癌診断への応用研究の準備も進める。
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