研究課題/領域番号 |
21H02866
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田中 利恵 金沢大学, AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター(保), 准教授 (40361985)
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研究分担者 |
笠原 寿郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (30272967)
松本 勲 金沢大学, 医学系, 准教授 (80361989)
井上 大 金沢大学, 附属病院, 助教 (00645129)
大倉 徳幸 金沢大学, 附属病院, 助教 (80397215)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肺機能診断 / 深層学習 / 予後予測 / 異常検出 / 胸部X線動画像 |
研究実績の概要 |
肺機能障害の有無や重篤度は呼吸機能検査によって診断されているが、感染リスクを考慮して実施できないことがある。新型コロナウイルス感染症の世界的流行を背景に、非経口で実施可能な画像ベースの肺機能診断法の開発が望まれる。しかし、胸部画像が内包する肺機能情報は膨大なため、肉眼での評価や従来の定量解析で理解するには限界がある。そこで本研究では、独自構築したマルチモダリティ・大規模データベースと4DCTシミュレーション技術を用いて、画像特徴に基づく肺機能推定(STEP1~STEP3)、異常検出(STEP4)、予後予測(STEP5)を行い、画像情報を主軸にした包括的な肺機能診断法の確立を目指す。
2021年度は、以下に示すSTEP1①②に取り組んだ。 STEP1① [入力データ:胸部X線画像(正面+側面)]と[教師データ:CT画像で計測した肺容積(L)]の関係を畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に学習させ、胸部X線動画像から肺容積を推定するCNNモデルを構築した。学習済みモデルに様々な吸気レベルのフレームからなる胸部X線動画像を入力することで、スパイロメータで計測される肺気量分画(1回換気量、肺活量など)を約80%の精度で推定できることを明らかにし、国内外の学術大会・英語論文にて初期成果報告を行った。学習データ数の増加とネットワークアーキテクチャ工夫による精度向上が今後の課題である。 STEP1② 胸部X線動画像上の骨陰影を低減後、時系列データを扱うことのできる再帰型ニューラルネットワークの発展形のLSTMを用いて、時間軸方向の変化を重視した特徴抽出を行った。[入力データ:胸部X線動画像(正面+側面)]と[教師データ:肺機能検査結果]の関係をCNNに学習させ、時間軸方向の画像特徴から推定可能な肺機能の解明に取り組み、これらの成果を国内外の学術大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究で構築したマルチモダリティ・大規模画像データベースを対象に、初年度からCNNモデルの構築に取り組むことができた。本課題の予備研究において、深層学習を用いることで、胸部X線動画像(正面+側面の2方向)からの肺容積推定に成功しており、その経験をもとに、データベースの一部を用いて初期モデルを構築した。また、シミュレーション4DCTとその疑似投影像による追加実験により、汎化性の向上に成功した。さらに、次年度に予定していたSTEP2「CT画像の画像特徴に基づく肺機能推定」の予備検討として、U-netを用いた肺セグメンテーションや画像特徴にもとづく肺年齢推定に取り組み、誤差10歳以内で推定できることを明らかにするなど、当初計画以上に進んだ研究項目もあった。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的流行ならびに世界的な半導体不足の影響で、本課題のために導入を予定していたデータサイエンスワークステーションの納品が遅れている。演算処理に時間を要してはいるものの、既存する複数のマシンで代替することで、当初計画どおり進めることができた。研究自体はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の上記成果にもとづき、2022年度は以下に示すSTEP2,3に取り組む。 STEP2:CT画像の画像特徴に基づく肺機能推定 従来のCNNを3次元に拡張した3D-CNNに[入力データ:CT画像]と[教師データ:肺機能検査結果]の関係を学習させ、3次元形態的な画像特徴から推定可能な肺機能を明らかにする。肺機能のうち、少なくとも形状や画素値で表現されるものや、それらから予測可能なもの(例:年齢、性別、身長を基に算出される予測1秒量、予測肺活量など)が推定されると予想している。 STEP3:複数の画像特徴の統合利用による肺機能推定 胸部X線動画像とCT画像の画像特徴を統合後、[教師データ:肺機能検査結果]の関係をCNNに学習させ、画像特徴の統合で推定精度が向上するかどうかを明らかにする。種別の異なる複数のデータを単一のCNNに入力すると、データ間の統計的違いの影響で学習が進まない。そこで、モダリティごとの専用CNNから出力される特徴量を統合するネットワーク構造とする。 本課題のために導入するデータサイエンスワークステーションを介して学外のスーパーコンピュータにアクセスし、構築モデルの学習と最適化に取り組む予定である。
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