研究課題/領域番号 |
21H02872
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 達彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主席 (30354707)
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研究分担者 |
渡部 直史 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90648932)
兼田 加珠子 (中島加珠子) 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任准教授(常勤) (00533209)
樺山 一哉 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (00399974)
佐々木 秀隆 大阪大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (10738628)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 標的核医学治療 / 線量評価 / α線 / マイクロドジメトリ / PHITS |
研究実績の概要 |
α線放出核種を用いた核医学治療(Targeted Alpha Therapy, 以下TAT)は、隣接臓器浸潤や遠隔転移など進行性の難治性がんに対して極めて有望な治療法として社 会の大きな注目を集めている。TATの高い治療効果はα線が短飛程かつ高電離密度であることに起因するが、TAT研究は臨床や創薬が先行して放射線生物学や医学 物理のような基礎研究が遅れており、それらα線の特性が治療効果に与える影響の定量的な評価はほとんど行われていない。そこで本研究では、これまで異なる 分野で活躍してきた研究者らが連携し、数理モデルと実験を組み合わせTATの高い治療効果を細胞スケールのミクロ線量の不均一性から推定する手法の確立を目指 す。また、その結果を元にTATにも適用可能な線量評価システムを開発し、その妥当性を臨床研究で検証する。 令和4年度は、昨年度に開発したPHITSベースの核医学用線量評価システムと、昨年度に大阪大学附属病院に導入した並列計算機を用いて、ゾーフィゴ(Ra-223を用いた核医学治療薬)を投与した骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がん患者の線量評価を実施した。また、その成果を世界核医学会や日本核医学学会にて発表した。昨年度に実施した[At-211]NaAtと[I-131]NaIを用いた細胞実験時における詳細な線量評価を実施し、細胞生存率及びDNA二重鎖切断に対する生物学的効果比を推定した。得られた結果は、Int. J. Mol. Sci誌にて発表した。また、細胞核選択的薬物送達を志向した抗体を開発し、投与線量依存的なDSBが誘導されたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に開発した核医学用線量評価システムや購入した並列計算機を用いて、当初の予定通り、実際の患者に対する線量評価を実施した。結果は、おおむね良好であったが、データの分解能が悪く事前処理が必要であることが分かり、現在、その調整中である。細胞実験に関しては、昨年度、線量評価が不十分であったため生物学的効果比(RBE)の推定ができなかったが、本年度は、実験条件を詳細に模擬したシミュレーションを実施して線量を正確に推定し、RBEを決定できた。決定したRBEは、従来考えられていた値よりもやや低く、現在、その原因を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、前処理をしたゾーフィゴ投与患者のSPECT/CT画像からPHITS入力ファイルを作成し、その臓器線量や腫瘍線量を評価する。また、細胞実験で得られたRBEがそれほど高くなかった原因をマイクロドジメトリの観点から解明する理論・実験研究を実施する。特に、実験研究では、X線もしくはγ線照射に対する実験を実施し、電子(β線)ではなく光子を基準放射線とした生物学的効果比を決定する。また、細胞に取り込まれるAt-211の割合をより精度よく評価するため、At-211標識抗体で処理後、非接着分子を除去した細胞を複数の処理時間で調整し、それぞれの線量を評価する。さらに、この条件におけるDSB活性評価も併せて実施する。
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