研究課題/領域番号 |
21H02936
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松阪 泰二 東海大学, 医学部, 教授 (50317749)
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研究分担者 |
小泉 賢洋 東海大学, 医学部, 講師 (30566170)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オルガノイド / ポドサイト / 腎臓病 / ネフローゼ症候群 / ネフロン前駆細胞 |
研究実績の概要 |
[1] 培養ポドサイトにおける傷害機序:hCD25を発現するラットポドサイト株hCD25-C7において、CRISPR-Cas9系を用いてBAK1/BAX欠損した細胞を樹立した。LMB2添加後の細胞死や炎症関連遺伝子の発現は顕著に抑制され、LMB2による傷害にBak1/Baxが関与することが確認された。hCD25-C7細胞と、マウス初代培養ポドサイトを共培養し、LMB2添加後に選択的にマウスRNAの解析を行った。マウスのGadd45bとCsf1が増加し、モザイクマウスで観察された現象の一部が再現された。現在のところGap junction阻害薬 (Meclofenamic acid)やSTING 阻害薬 (C-176)では、間接的なGadd45bの増加の阻害は認められていない。 [2] 糸球体濾過圧の作用点の特定: NEP25マウスにLMB2を投与し、6時間後から6日目までlosartan (25 mg/g BW)を経口投与させた。LMB2投与6日後に一側尿管結紮を行い、7日目にマウスを安楽死させた。免疫染色により、cLaminA陽性のポドサイト数を計測したところ、losartanにより減少しなかった。したがって、糸球体濾過圧の軽減は、caspase 3の活性化を軽減させるのではなく、細胞死を免れたポドサイトを保全させていると推測された。 [3] 腎臓オルガネラのポドサイトの傷害機序: hCD25(+)と(-)のポドサイトが混在するキメラ腎臓オルガネラを作成した。LMB2投与後、hCD25(+)ポドサイトも、hCD25(-)ポドサイトも、ともにpodocin染色が消失した。すなわち、モザイクマウスで観察された間接的ポドサイト傷害が、in vivoでも再現が可能であった。Gap junction阻害薬の効果を試したが、間接的ポドサイト傷害は防止できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養ポドサイトでの実験は概ね順調に実施している。免疫複合体によりポドサイト傷害が誘発可能かどうかは実施できていないが、マウスとラットの細胞の共培養系で、間接的傷害の一部が再現可能なことがわかった。また、当初計画には含まれなかった腎オルガノイドを用いた系でも、間接的ポドサイト傷害を再現可能なことがわかり、傷害経路の探索に有用であると思われた。また、in vivoの実験では、losartanによる糸球体濾過圧の軽減は、caspase活性化には影響を与えず、apoptosisを免れた細胞のその後の傷害を軽減させることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、間接的ポドサイト傷害にcGAS-STING系が関与しているのではないかと予想したが、現在までの培養ポドサイト共培養系では、STING阻害薬はGadd45bの発現増加を阻害せず、STING系の関与の示唆が得られていない。そのために、当初予定していたSTING KOマウスの作成、または導入には踏み出せていない。残された時間を考慮し、キメラ腎オルガノイド系でcGAS/STING阻害薬の効果を調べることを計画している。
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