研究課題
[1] 培養ポドサイトにおける傷害機序:hCD25発現ポドサイト株と、マウス初代培養ポドサイトの共培養系で、LMB2添加後にマウスGadd45bが増加する現象は、Gapjunction阻害薬(Mecrophenamic acid)やSTING 阻害薬 (C-176)等様々な薬剤で防止されなかった。[2] 糸球体濾過圧の作用点の特定: LMB2を投与したNEP25マウスにみられるcaspase活性化ポドサイトはロサルタンで減少せず、糸球体濾過圧低下は細胞死を免れた細胞を保全している事が示唆された。[3] 腎臓オルガネラのポドサイトの傷害機序: hCD25(+)と(-)のポドサイトが混在するキメラ腎臓オルガネラにLMB2投与する系で、hCD25(-)細胞のpodocin染色消失し、mRNAが減少する事を見出した。この系により間接的ポドサイト傷害を評価した。Gap junction阻害薬、NF-kB阻害薬、TRPC6阻害薬、TGFβ阻害薬では防止できなかった。[4] ポドサイトミトコンドリア傷害で誘導されるCollagen分解: NEP25マウスのポドサイト傷害早期に、DQ-Gelatin, DQ-Collagen IVで描出されるcollagen分解活性が糸球体で増強し、これはEDTAで阻害されずMMP以外の関与が示唆された。また、これに平行して、Collagen Hybridizing Peptideで描出される変性Collagenの蓄積が示された。[5] ポドサイトミトコンドリア傷害で転写因子Dach1の発現が減少するが、ポドサイトにおけるDach1の欠損は、それだけで正常成熟ポドサイトを損傷する事を示した。
3: やや遅れている
培養ポドサイトでの実験では、間接的ポドサイト傷害にSTING系の関与を示す事ができなかった。当初計画のSTINGノックアウトマウスの使用は、時間的に期間内の実施が現実的でないと判断し、腎オルガノイドを用いた系で実験を進めている。ポドサイト傷害マウスに立ち返り解析を進め、EDTAで阻害されないcollagen分解活性が、ポドサイト傷害の極めて早期にメサンギウム基質に増加する事が示された。この生化学的解析を進めているが、collagen分解活性が液体中で示されないので、既存の方法が使用できず難航している。
キメラ腎オルガノイド系でcGAS/STING阻害薬の効果は継続して調べるが、残された時間を考え、当初研究目的にとらわれず、傍流現象も含めて現在までに得られた知見(Dach1の機能、キメラ腎オルガノイド系での知見)の論文化を進めてゆく。また、ポドサイト傷害に続発するCollagen分解の性状解析を進める。
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