研究課題
皮膚筋炎患者から検出される筋炎特異的自己抗体の核内自己抗原であるtranscriptional intermediary factor 1(TIF1)γに対する自己抗体は、皮膚筋炎に特異的に検出され、特に悪性腫瘍合併皮膚筋炎の血清学的マーカーとなる。しかしながら、TIF1に対する自己免疫応答が筋炎の病態に関与しているかどうかは不明である。リコンビナントヒトTIF1γ全長蛋白質を作製し、野生型マウスに繰り返し免疫をおこなった。TIF1γの免疫により、病理組織学的にCD8+T細胞の浸潤を伴う筋線維の壊死/萎縮を呈する筋炎が野生型マウスにおいて誘導され、TIF1γ特異的T細胞、抗ヒトおよびマウスTIF1γ IgG抗体が確認された。そこで、β2-ミクログロブリン欠損(CD8T細胞欠損)、パーフォリン欠損、Igμ欠損(B細胞欠損)、インターフェロンα/β受容体(IFNAR)欠損マウスに、同様に筋炎を誘導したところ、β2-ミクログロブリン欠損、パーフォリン欠損、CD8細胞欠損、IFNAR欠損マウスでは筋炎の発生率と重症度が有意に低かったが、B細胞欠損マウスでは野生型と同等に筋炎を発症した。TIF1γを免疫したマウスのリンパ節T細胞および血清IgGを用いて、移入実験を行ったところ、CD8+T細胞の移入はレシピエントに筋炎を誘発したが、CD4+T細胞やIgGの移入はそうではなかった。ヤヌスキナーゼ阻害薬であるトファシチニブによる治療によって、TIF1γ免疫による筋炎は有意に抑制された。以上より、TIF1γに対する免疫応答は実験的筋炎を引き起こしうるが、CD4+T細胞、B細胞、抗体は主要な役割を持っておらず、CD8+T細胞やI型インターフェロンが病態の中心であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に沿って進捗しているため。
筋炎特異抗体および筋炎関連抗体の病態に関わるメカニズムの解明を進める。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件)
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