研究実績の概要 |
マウス同種造血幹細胞移植後にcyclosporin A (CSP)を投与することによって, ドナーT細胞疲弊の進行が停止し, 疲弊T細胞 (Tex)の前駆細胞 (precursor Tex: pTex)が増加することを示した。pTexが保たれることによって, 移植後の免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果が増強された。一方, 移植後のT細胞を回収して, 別のレシピエントに輸注したところ, 1回目の移植後にCSPを利用していると, 2回目の移植後に慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)が発症することが示された。一方, 移植後大量シクロフォスファミド(Posttransplant cyclophosphamide: PTCY)法を行ってからCSPを移植後day5から投与しても, pTexは誘導されなかった。CSPによるGVHD予防は長期的には慢性GVHDの発症に繋がる可能性が示された。 移植後にFLT3阻害剤 (gilteritinib)投与によって, 移植後にFLT3変異陽性急性白血病細胞からIL-15の産生が促進され, ドナーT細胞のTexの分化が抑制され, 白血病に対する細胞傷害活性が増強されることを示した。移植後day5からday14まで短期間のgilteritinib投与で, GVHDの増悪無しでGVL効果が増強されて, マウスの生存が延長されることを示し, Bone marrow transplantation誌に発表した。 ミトコンドリアナノメディシンを利用した悪性腫瘍治療法の開発のため, ミトコンドリア外膜の活性を保った単離ミトコンドリア (Q)を利用した。新規キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)作成時にQを加えることによって, CAR-T細胞内にQを取り込ませ, CAR-T細胞の作成効率を改善することが可能となった。Qを利用することによって臨床的に問題となる, CAR-T細胞の作成失敗を防ぐことが期待される。
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