研究課題
TRAF6は、自然免疫シグナル経路において中心的役割を担っているE3ユビキチンリガーゼである。骨髄系腫瘍において、がん促進的とがん抑制的にも機能すると報告されており、その役割は複雑である。申請者が本研究を進める過程で、自然免疫シグナル経路による典型的な役割である炎症亢進ではなく、代謝制御を介したメカニズムがTRAF6を介した白血病の病態機序に重要な役割を果たしていることを見出した。本研究では、この点に注目し、さらなる分子メカニズムの解明を進めている。
2: おおむね順調に進展している
Traf6欠損マウスを用いたMLL-AF9白血病マウスモデル、ならびにTRAF6欠損ヒト白血病細胞株を用いてTARF6の白血病におけるoncogenicな役割を明らかにした。これらのモデルと白血病臨床検体の遺伝子発現情報のデータベースを用いて解析した結果、ミトコンドリア機能関連の遺伝子発現の変化が認められた。実際、TRAF6欠損白血病細胞株においてミトコンドリア呼吸能低下、ATP産生能低下、ミトコンドリア膜電位低下が認められた。また、メタボローム解析により広範な代謝中間産物の低下がTRAF6低下により引き起こされることが判明した。これらにより、自然免疫シグナルによるダイナミックなエネルギー代謝制御と白血病の病態への関与が示唆された。
現在、TRAF6を介した代謝制御に寄与する重要な分子機序としてO-GlcNAcタンパク修飾に注目している。O-GlcNac修飾を付加する酵素であるOGTならびに除去する酵素であるOGAに介入し、TRAF6を介した代謝状態への影響を検証することで、TRAF6/OGT/O-GlcNAc経路の白血病病態への重要性を検証する。
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