研究課題
高トリグリセライド(TG)血症は動脈硬化のリスクとなることが遺伝疫学的研究から明らかとなってきているが、現時点有効な治療薬に乏しい。本研究課題は、申請者らが独自に確立してきたマウスモデルを用いて高TG血症の分子機構を解明、新規治療法を開発、さらに高TG血症が動脈硬化をきたす分子機構を解明し、動脈硬化の新たな治療法を開発することを目的としている。高TG血症の研究は適切な動物モデルがなかったことが研究開発の遅れの原因となっていた。申請者は、動脈硬化惹起性高TG血症の原因遺伝子apoA-Vの欠損マウスを用いればヒトの高TG血症を再現可能であり、高TG血症とその合併症の発症機序の解明に役立つ可能性を示してきた。特に、高炭水化物食・加齢・ある種の薬剤(LXRアゴニスト)による高TG血症の場合には、SREBP-1c活性化とそれによる大型VLDL産生が高TG血症の増悪にほぼ必須の役割を果たすことを、apoA-V;SREBP-1c両欠損マウスを用いて示してきた。本研究課題ではこの独自のモデルを活用する。本年度は下記の成果を得た。A)環境要因による高TG血症増悪のin vivo分子機構解明:臨床的に重要な環境負荷(糖尿病、薬剤など)による高TG血症がapoA-V欠損マウスで再現されるとの結果を得、さらにこの現象におけるSREBP-1cの寄与をSREBP-1c欠損モデルを用いて解析した。B)高TG血症の新規治療法開発:高TG血症とそのレスキューに寄与する遺伝子を探索するため、apoA-V;SREBP-1c欠損モデルを活用して肝臓マイクロアレイ解析を行い、その知見に基づき、Aで解析した薬剤性高TG血症の高TG血症治療薬による治療可能性を検討した。C)高TG血症性動脈硬化のマウスモデル確立と分子機構解明:apoA-V欠損マウスモデルを用いて、高TG血症による動脈硬化のモデルマウスを樹立した。
2: おおむね順調に進展している
高トリグリセライド(TG)血症は動脈硬化のリスクとなることが遺伝疫学的研究から明らかとなってきているが、現時点有効な治療薬に乏しい。本研究課題は、申請者らが独自に確立してきたマウスモデルを用いて、高TG血症の分子機構を解明、新規治療法を開発、さらに高TG血症が動脈硬化をきたす分子機構を解明し、動脈硬化の新たな治療法を開発することを目的としている。3つの主たる研究項目、A)環境要因による高TG血症増悪のin vivo分子機構解明、B)高TG血症の新規治療法開発、C)高TG血症性動脈硬化のマウスモデル確立と分子機構解明について、当初の研究計画の通りこれらの項目に取り組んでいる。いずれの研究項目についても、本年度も一定の成果が得られてきているため、おおむね順調に進展していると判断した。また、次年度の研究項目のための準備も整っており、現在進行中である。
本研究課題では、A)環境要因による高TG血症増悪のin vivo分子機構解明、B)高TG血症の新規治療法開発、C)高TG血症性動脈硬化のマウスモデル確立と分子機構解明を目指しているが、次年度も、これまで得られた知見を元に、研究計画通り、次年度の研究項目を引き続き実施する予定である。B)については、B-1) SREBP-1cの標的遺伝子をターゲットとした治療開発にこれまで取り組んできたが、この知見をさらに発展させ、高TG血症治療薬のスクリーニングを行い、高TG血症の新たな治療手段を開発する。さらに、B-2) 生活習慣(摂食リズムや運動)をターゲットとした治療開発、C)動脈硬化モデルの解析にも取り組む計画となっており、計画通り進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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