研究課題/領域番号 |
21H03036
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
土肥 謙二 昭和大学, 医学部, 教授 (20301509)
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研究分担者 |
大滝 博和 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (20349062)
諸藤 陽一 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (40437869)
宮本 和幸 昭和大学, 医学部, 准教授 (80555087)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 熱中症 / 体温 / PACAP / 神経保護 |
研究実績の概要 |
熱中症の炎症応答は敗血症に類似するとされる。これまでPACAPやBDNFは多くの場合抗炎症作用を有しており熱中症の予防効果を有すると考えられている。まず、2021年度はPACA KOマウスを用いて熱中症の影響について調べた。その結果、PACAP KOマウスでは野生型と比較して熱中症暴露後の死亡率が低い結果となった。これはPACAPの神経保護作用から考えうる予測結果とは異なっていた。この結果は事前に予測できていないために現在原因について追加研究を行った。その結果、PACAP KOおよびその野生型(WT)マウスは3時間の脱水の後に温度36±2°C、湿度99%の熱中症チャンバーにいれ、暑熱暴露した。最初に暴露時間による死亡率を調べた。その後1時間の暴露直後に採血および組織採取を行た。熱暴露後の生存率はPACAP KOマウスが野生型マウスより有意に高かった。さらに暑熱暴露直後の肝障害や腎障害などの組織障害もまたPACAP KOマウスが野生型マウスと比べて有意に軽減していた。これまでPACAPは組織保護に働くと考えられてきたが熱暴露刺激後、PACAP KOマウスの方が熱障害に強いことが見出された。これらの検証のためにPACAPの熱感受性と体温調節の関係を行った。その結果PACAP KOマウスでは熱暴露後における視床下部の ventromedially preoptic area (VMPO)におけるc-fosの発現が少ないことが確認された。 さらにこれらの調節機能はPACAPによる自律神経を介した褐色脂肪組織(BAT)における熱産生メカニズムが関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は予測された結果と研究結果に乖離が見られたために、頻回の再検討を行ったために遅れていたが研究結果の再現性が認められたので現在は、PACAPの体温調節にかかわる生体での機能解明を行っている。そのために多少の遅れは生じているが研究進捗と結果についてはおおむね順調である。ただし、共同研究者の留学などにより今後多少の研究の遅延が懸念されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はPACAPの体温調節機能と熱暴露時の機能解明を行っていくことでPACAPなどによる体温調節が熱中症の予防に寄与できるかについてより詳細な検討を進めていく予定である。褐色脂肪組織に関与した熱産生メカニズムのコントロールによって熱中症が予防できる可能性について検討していきたい。
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