研究課題/領域番号 |
21H03079
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
千代田 達幸 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40445367)
|
研究分担者 |
角田 達彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10273468)
鎌谷 高志 東京医科歯科大学, M&Dデータ科学センター, 講師 (90645764)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | オルガノイド / 卵巣癌 / オミクス / 薬剤スクリーニング |
研究実績の概要 |
2022年度は明細胞癌(OCCC)オルガノイドを用いて4850化合物(Selleck Chemicals)のhigh throughput drug screening(HTDS)を行い、同定した薬剤を用いた薬剤感受性試験によるvalidationおよびオミクス解析によるバイオマーカー同定を行った。また、候補薬剤の有効性や作用機序を検証するため、in vitro/vivoでの薬剤感受性試験、臨床標本での免疫組織化学染色などを実施した。 多発性骨髄腫(MM)で臨床的に使用されているボルテゾミブ、イキサゾミブ、カーフィルゾミブなどのプロテアソーム阻害剤(PI)をHTDSにより抽出した。白金製剤とは対照的に、PIは薬剤感受性試験の結果、9種類のOCCCオルガノイドで有効であった。OCCCオルガノイドを用いた異種移植モデルにおいて、ボルテゾミブはコントロールと比較して腫瘍の成長を有意に抑制した(p<0.001)。MMでは、過剰な小胞体ストレスとunfolded protein response(UPR)がPIの作用に寄与していることが報告されている。ssGSEAにより、OCCCのUPR経路はMMと同様に活性化されていることが確認された。ボルテゾミブを投与したOCCCオルガノイドではUPR経路のアポトーシス因子の発現が増加し、電子顕微鏡観察で小胞体径の拡張が認められたことから、その作用機序と小胞体ストレスの関係性が示唆された。 同定したバイオマーカー候補遺伝子AのCRISPR/Cas9ノックアウトオルガノイドは、コントロールと比較して有意に増殖が遅くなった。また、ノックアウトオルガノイドではUPR経路の活性化を引き起こし、PI、さらにはプラチナ製剤に対する感受性が高くなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり明細胞癌オルガノイドに効果的な薬剤スクリーニングに成功し、バイオマーカー候補遺伝子も同定することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
PIは、ERストレスとUPRを介したOCCCの新規治療薬となる可能性がある。同定したバイオマーカー候補遺伝子は治療や薬剤耐性を改善するためのターゲットであると同時に、有効性を示すバイオマーカーとなる可能性がある。我々はこれらの実験結果を、OCCCにおけるPIの臨床試験のProof of conceptとして臨床応用を目指す。また、MRDを根絶する併用療法を検討していく。
|