研究課題/領域番号 |
21H03091
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野田 航介 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (90296666)
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研究分担者 |
村田 美幸 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (50423752)
加瀬 諭 北海道大学, 大学病院, 講師 (60374394)
矢部 一郎 北海道大学, 医学研究院, 教授 (60372273)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 加齢黄斑変性 / 網膜色素上皮細胞 / αシヌクレイン |
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(AMD)の病態基盤には網膜色素上皮細胞(RPE)の変性や細胞死が関与している。興味深いことに、AMD患者ではパーキンソン病の発症リスクが有意に高いとする報告が近年相次いでおり、パーキンソン病が神経変性疾患であることから、この2つの疾患には共通病態が存在する可能性があると仮説を立てた。本研究の目的は、「AMDにおけるパーキンソン病との共通病態を探索すること」である。 研究開始初年度は、まずヒト摘出眼球切片を用いてRPEにおけるαシヌクレインおよびリン酸化αシヌクレインの局在を免疫組織染色によって検討した。その結果、ヒト眼球組織のRPEにおいてαシヌクレインとリン酸化αシヌクレインの比較的強い染色シグナルが確認された。次に、RPEにおけるαシヌクレインおよびリン酸化αシヌクレインの産生機序を検討するため、in vitro実験系を用いて検討を行なった。血清除去条件下でヒト培養RPE株hTERT RPE-1を24時間培養した後のαシヌクレインおよびリン酸化αシヌクレインの変化をwestern blottingで検討した。その結果、血清除去によってhTERT RPE-1におけるαシヌクレインおよびリン酸化αシヌクレインのタンパク量は増加していた。また同条件下では、パーキンソン病発症に重要な役割を演じているとされるleucine-rich repeat kinase 2 (LRRK2)のmRNA発現およびタンパク量も増加した。 リン酸化αシヌクレインはオリゴマーを形成することで神経細胞の変性を引き起こすとされる。また、αシヌクレインのリン酸化およびその蓄積には前述のLRRK2が関与するとする報告がある。以上のことは、パーキンソン病と同様に、加齢などの要因によるRPEの変性にもリン酸化αシヌクレインが関与している可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度交付申請書に記載した研究計画では、アクロレインと呼ばれるタバコなどに含まれる不飽和アルデヒドが網膜色素上皮細胞(RPE)の変性に関与していると考え、同分子による刺激がRPEに対して及ぼす影響を検討する予定であった。しかし、パーキンソン病の病態で重要な役割を演じるとされるαシヌクレインに関して調べることがまず重要と考え、研究期間初年度にヒト眼球切片および培養細胞を用いてαシヌクレインの局在等に関する検討を行った。当初の計画には入っていなかった検討事項ではあるが、本研究計画の遂行には必須の知見であるため、初年度に追加して行ったものである。以上の経緯から、当初計画よりはやや遅れが生じてはいるが、おおむね順調に研究は進展していると自己評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
上記進捗状況に記載した通り、おおむね順調に研究は進展しているものの、追加の検討を行ったことでやや研究計画には遅れが生じている。そのため、まず令和3年度に予定していたアクロレインに関する研究計画を行う予定である。一方、今年度行ったαシヌクレインに関する検討結果も網膜色素上皮細胞(RPE)の変性機序について重要な知見をもたらすものと考えられるため、RPEの変性におけるαシヌクレインの病的意義も並行して検討する予定である。
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