研究課題/領域番号 |
21H03105
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90221936)
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研究分担者 |
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (30322233)
服部 高子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (00228488)
高江洲 かずみ (河田かずみ) 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10457228)
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (20112063)
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10432650)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | lncRNA / UCA1 / CCN2 / skeletal development / chondrocyte |
研究実績の概要 |
本研究を支える2つの柱は、cellular communication network factor 2 (CCN2) 遺伝子をトランスに制御する長鎖非コードRNA (lncRNA) であるurothelial cancer associated 1 (UCA1) と、シスに制御するanti-CCN2 3'-UTR RNA (ACUR) である。 まずUCA1については、当該lncRNAの作動エレメント、つまり軟骨細胞分化を促進するRNA上の機能領域を突き止めるためin silicoでUCA1の構造を予測し、順に欠損させた3つの変異体を発現するシステムを、レンチウイルスベクターを用いて構築し、それらベクターを使って標的であるマウスATDC5細胞でこれら変異体を強制発現できることを確認できた。またUCA1が吸着しうるmiRNAを探索し、現在までに37のmiRNAをUCA1によって軟骨細胞内で制御されうる分子として特定できた。さらに新たな展開として、UCA1が骨芽細胞機能に与える影響を、軟骨細胞と同じ戦略、すなわちUCA1を持たないマウスMC3T3-E1細胞にレンチウイルスベクターで強制発現させ、骨芽細胞マーカー遺伝子の発現定量やアルカリホスファターゼ染色で評価した。しかしながら軟骨細胞とは異なり骨芽細胞形質はUCA1の影響を受けなかった。以前の研究で、間葉系幹細胞が骨芽細胞へ分化する際、UCA1発現は減少することも確認している。以上の所見は、UCA1が軟骨細胞において高度に特異的な機能を発揮していることを示唆している。 そしてACURについては、センスRNA、つまりCCN2 RNA には影響を与えることなくアンチセンスRNAのみを、RNase H活性により特異的に分解するGapmeRを5種類設計・合成し、ヒト軟骨細胞様HCS-2/8細胞に導入して関連遺伝子発現量を評価した。その結果、5種のうち2種のGapmeRによって効率よくACURのサイレンシングが起こることが確認され、その状況下ではCCN2遺伝子ばかりでなく、軟骨細胞マーカー遺伝子も抑制される傾向にあった。つまり骨格形成に対してインパクトを与えている可能性が濃厚となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究を立案した当初は、まずUCA1についての研究を先行させ、ACURに対する研究は2022年度から始動する計画であった。先行させたUCA1を対象とした研究は、実験担当者が予定より早く異動したため予定通りには進まず、進展は着実に見られたものの現時点では目標とするの到達点には達していない。しかしその一方で、骨格形成に関わる別の細胞にまで視点を広げて新たな実験を計画実施し、骨芽細胞におけるUCA1の役割について新たな所見を得ることができた。そして来年度に向けて、骨格形成に直接関与するもう一つの重要な細胞である破骨細胞に対する効果を評価する実験も計画中である。したがって総合的にみれば、UCA1研究はおおむね順調に進展していると捉えている。 しかしながら、来年度から手を付ける予定だったACURについても前倒しで実施し、決定的ではないものの非常に興味深い所見が得られている。この所見からは、CCN2遺伝子から出力される別のlncRNAの本研究への関与や、これらlncRNAによる当初は想定していなかった遺伝子発現制御機構がある可能性も浮かび上がってきた。したがって初年度としては予想を超える展開が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2本立ての研究計画の実施に際して、そのうち1つに人事異動が原因で現在遅れが見られる。これは研究が壁にぶつかって予定通り進まなかったわけではなく、マンパワーを補充すれば解決する問題である。幸い来年度からは新たな大学院生が研究チームに加わるので、十分遅れは取れ戻せるものと考えている。これに加えて重要なのは、初年度の研究を進める過程で浮かび上がってきた、研究を提案した当初には考えつかなかった新たな関連課題にいかに取り組んで行くかである。来年度は当初の研究計画を着実に進めるとともに、こういった新たな局面を切り拓くために研究組織の再編、共同研究の拡充も視野に入れて取り組んでいかねばならない。
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