研究課題
【目的】破骨細胞では、ITAMモチーフ含有分子の中ではDAP12とFcRγの発現が高く、ダブル欠損マウスは大理石骨病を呈する。津田らは、DAP12と会合して、破骨細胞の分化に伴って特異的に発現が上昇する免疫グロブリンスーパーファミリー分子として、シアル酸受容体タンパク質Siglec-15を同定した。今回、Siglec-15中和抗体の効果について検討した。【結果】(1)Siglec-15抗体は、骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系で形成された破骨細胞のアクチンリング形成および象牙質切片上の吸収窩形成を濃度依存的に阻害した。(2)骨髄細胞培養系にRANKLとM-CSFを添加し破骨細胞が誘導される条件で、Siglec-15抗体はTRAP陽性の多核破骨細胞の分化を阻害した。一方、アルカリホスファターゼ陽性の骨芽細胞が多数誘導された。この時、多核破骨細胞形成は完全に抑制されたが、単核TRAP陽性破骨細胞の存在が認められた。(3)我々は、破骨細胞由来のLIFがスクレロスチン抑制を介して、骨形成を促進させるカップリング因子である可能性を見出した。Siglec-15抗体で処理した破骨細胞においてカテプシンKおよびRANKの発現維持と同様に、LIF発現も維持されていた。この結果から、Siglec-15抗体で処理した破骨細胞による骨形成の促進作用に、LIF発現の維持が関与する可能性が示された。(4)Siglec-15抗体を正常マウスおよびオステオプロテゲリン(OPG)遺伝子欠損マウスに毎週1回投与した。30日目の骨組織を観察したところ、正常マウスにおける骨量増加作用およびOPG欠損マウスにおける骨粗鬆化の改善傾向が認められた。
2: おおむね順調に進展している
Siglec-15抗体の投与実験(正常マウスおよびオステオプロテゲリン(OPG)遺伝子欠損マウス)による骨量増加作用および骨粗鬆化の改善傾向が認められた。
1 Siglec-15抗体の破骨細胞と骨芽細胞分化における作用メカニズムの解析 マウスおよびヒト由来細胞を用いた培養系を用いて、Siglec-15抗体の作用を検討する。2 破骨細胞を介した骨芽細胞分化促進機構の解析 W9ペプチドやリコンビナントWnt5aの骨芽細胞分化促進作用について、Siglec-15欠損マウス由来の細胞培養系を用いて解析する。3 Siglec-15抗体のマウスへの投与実験による骨代謝カップリングメカニズムと癌免疫療法とのクロストークの解析 骨粗鬆症モデルマウス(OPG欠損、卵巣摘出OVX)、関節リウマチモデルマウス、癌の骨転移マウスなどの各種骨病変マウスにSiglec-15抗体を投与し、骨代謝カップリング機構と抗癌作用を観察する。4 破骨細胞からの骨形成を促進するRANKLリバースシグナルの全容解明 破骨細胞に発現するRANKエクソソームの作用について、細胞培養系を用いて解析する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件)
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