研究課題/領域番号 |
21H03125
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
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研究分担者 |
小出 雅則 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (10367617)
小林 泰浩 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20264252)
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (20350829)
中村 美どり 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (90278177)
山下 照仁 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (90302893)
上原 俊介 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (90434480)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 骨代謝カップリング / Siglec-15 / 骨粗鬆症 / RANKL / OPG / LIF |
研究実績の概要 |
ITAMは、T細胞やB細胞の受容体と会合する細胞膜アダプター分子の細胞内ドメインに共通してみられるモチーフとして発見された。破骨細胞では、DAP12とFcRγの発現が高く、ダブル欠損マウスは大理石骨病を呈する。津田らは、DAP12と会合する免疫グロブリンスーパーファミリー分子として、シアル酸受容体タンパク質Siglec-15を同定した。Siglec-15遺伝子欠損マウスは、骨吸収が抑制され骨量が増加するが、破骨細胞数は減少しない。この実験結果は、破骨細胞の存在が骨芽細胞の活性を支えていることを示唆している。我々は、Siglec-15中和抗体の効果について骨粗鬆症モデル動物を用いて検討した。まず、Siglec-15抗体を正常マウスおよび骨粗鬆症を呈するオステオプロテゲリン(OPG)遺伝子欠損マウスに毎週1回投与した。30日目の骨組織を観察したところ、正常マウスにおける骨量増加作用およびOPG欠損マウスにおける骨粗鬆化の改善傾向が認められた。さらに、骨粗鬆症モデルラット(OVX)を用いて、Siglec-15中和抗体の効果について検討した。副甲状腺ホルモン(PTH)による治療後のフォローアップ薬としてのSiglec-15中和抗体(32A1)の有効性をアレンドロネート(ALN)の有効性と比較した。 骨代謝回転に対する PTH の有益な効果は、治療中止から 8 週間後に消失した。Siglec-15中和抗体を4週間に1回、8週間投与すると、PTHからSiglec-15中和抗体に治療を切り替えた際の骨吸収と骨形成は抑制され、BMDと骨強度を維持した。アレンドロネートとは異なり、Siglec-15中和抗体による骨吸収抑制の開始は急速だったが、骨形成の抑制は穏やかだった。以上の実験結果から、骨粗鬆症モデル動物において、抗 Siglec-15 抗体の効果が有用であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Siglec-15抗体の投与実験(正常マウスおよびオステオプロテゲリン(OPG)遺伝子欠損マウス、卵巣摘出ラット)において、骨量増加作用および骨粗鬆化の改善傾向が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
1 Siglec-15抗体の破骨細胞と骨芽細胞分化における作用メカニズムの解析 マウスおよびヒト由来細胞を用いた培養系を用いて、Siglec-15抗体の作用を検討する。 2 破骨細胞を介した骨芽細胞分化促進機構の解析 W9ペプチドやリコンビナントWnt5aの骨芽細胞分化促進作用について、Siglec-15欠損マウス由来の細胞培養系 を用いて解析する。 3 Siglec-15抗体のマウスへの投与実験による骨代謝カップリングメカニズムと癌免疫療法とのクロストークの解析 骨粗鬆症モデルマウス(OPG欠損、卵巣摘出OVX)、関節リウマチモデルマウス、癌の骨転移マウスなどの各種骨病変マウスにSiglec-15抗体を投し、骨代謝カップリング機構と抗癌作用を観察する。 4 破骨細胞からの骨形成を促進するRANKLリバースシグナルの全容解明 破骨細胞に発現するRANKエクソソームの作用について、細胞培養系を用いて解析する。
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