研究課題/領域番号 |
21H03145
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
有吉 渉 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40405551)
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研究分担者 |
臼井 通彦 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (10453630)
望月 慎一 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (10520702)
安達 禎之 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (60222634)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / dectin-1 / β-glucan / オートファジー / 小胞体ストレス / エンドサイトーシス |
研究実績の概要 |
申請者は、破骨細胞前駆細胞に特異的に発現する糖鎖認識受容体dectin-1に着目し、β-glucanがdectin-1を介して、破骨細胞分化のマスター因子であるNFATc1を負に制御する結果、破骨細胞分化を抑制することを見出した。破骨細胞分化過程におけるNFATc1の自己増幅による発現量の維持には、免疫受容体を介したsykの活性化やカルシウムシグナルが必須であり、β-glucanがこれらを修飾し、破骨細胞分化を負に制御すると想定されるが、詳細な機構は不明である。そこで、破骨細胞分化修飾に関わるβ-glucanの構造的特性や受容体の同定、およびNFATc1を標的とした分子レベルの抑制機構を解析し、免疫受容体を介した破骨細胞分化制御機構の解明や選択性の高い骨代謝疾患治療薬の開発を目指した研究を遂行する。 dectin-1を過剰発現させた破骨細胞前駆細胞では、β-glucanの添加により、オートファジーによるsykタンパクの分解が誘導され破骨細胞への分化が負に調節された。さらに、分解対象となるdectin-1およびsykタンパクを標識したところ、これらのタンパクはβ-glucan添加後、ただちに早期エンドソームマーカーとの共局在が観察されたことから、この選択的なオートファジーの誘導には、エンドサイトーシスとの協調が関与していることが強く示唆された。その一方で、β-glucanにはNF-κBを介したdectin-1非依存的な破骨細胞分化の負の制御機構が存在することが確認され、これに糖鎖認識受容体としてCR3の関与が証明された。加えて、同じくグルコースより構成される糖鎖であるα-glucanについては、生物学的機能がβ-glucanと大きく異なることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の記載通り、2021年度は「β-glucanによるNFATc1発現抑制の分子メカニズムの解明」を目的に研究を行った。NFATc1の初期誘導に関するNF-κB経路の活性化抑制については、dectin-1非依存的に誘導されることが確認され、阻害抗体を用いた研究結果から、糖鎖認識受容体であるCR3の関与が示唆された。想定外の研究成果ではあるが、β-glucanによる破骨細胞分化修飾に関わる新たな経路として研究を継続する。 また、β-glucanによるオートファジーを介したタンパク分解について、標的タンパクであるsykの標的化に着目した研究を展開した。その結果、sykのポリユビキチン化は確認されなかったものの、β-glucan添加後のdectin-1およびsykタンパクが初期エンドソームに取り込まれることが確認された。すでにクラスリン、カベオラおよび脂質ラフト依存性エンドサイトーシスの阻害より、β-glucanに誘導されるsykタンパクの分解の回復を見出しており、オートファジーを介した分解系の誘導にエンドサイトーシスとの協調が関与していることが示唆された。その結果を基盤にさらなる細胞内トラフィックの解析に加え、選択的オートファジーへの1つEND選択的オートファジーに着目した検証を遂行する。 一方、付随研究として、口腔バイオフィルムを構成する糖鎖α-glucanについての検討結果から、ともにグルコースより構成されるα-glucanとβ-glucanでは、その生物学的活性が大きく異なることが明らかとなった。口腔感染症の制御という観点から、α-glucanによる破骨細胞分化への作用についても今後検討を行っていく。 加えて、β-glucanの構造解析やモデル動物を用いた歯周病モデルに対する検討も展開中であり、骨代謝疾患に対する新たな治療戦略確立に向けた研究活動を行う。
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今後の研究の推進方策 |
1. 破骨細胞分化修飾に関わるβ-glucanのキャラクタリゼーションと受容体の同定:dectin-1の他にβ-glucanの認識能を有する免疫受容体の関与について、前駆細胞における受容体過剰発現株の作製や遺伝子ノックダウンを行い、破骨細胞分化能を評価する。また、α-glucanについてもキャラクタリゼーションを実施する。 2. β-glucanによるNFATc1発現抑制の分子メカニズムの解明:β-glucanによる破骨細胞分化のマスター因子NFATc1の発現抑制に関わるそれぞれの候補機構について分子レベルでの詳細な解析を実施する。(1)NF-κB経路の活性化抑制:主要受容体として新たに関与が見出されたCR3直下に存在するNF-κB経路の制御因子を同定する。(2)sykのオートファジーを介したタンパク分解:1)オートファゴソームの誘導・制御に関与するシグナルの活性化を確認する。2)メンブレントラフィック制御に関わる新規遺伝子同定のため、次世代シーケンサーによる解析を行い、未知の転写産物の発現量について検証する。3)β-glucanによる小胞体ストレスセンサーであるIRE1の発現増強に伴うIRE1-XBP経路の活性化について検証する。4)基質選択性のないオートファゴソームの基質特異的なタンパク分解誘導に関わるアダプター分子を同定する。(3)カルシウムシグナリングの修飾:β-glucanによる破骨細胞分化誘導時の細胞内カルシウム動態修飾に関与する細胞内シグナル分子を同定する。 3. 動物実験:ラット歯周炎モデルに対するβ-glucanの投与実験の結果、得られた標本について解析を行う。一方、-OH基を付加し、水溶性を高めたβ-glucanの破骨細胞分化抑制能も評価する。
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