研究課題
代表的「副代謝系」である口腔マイクロバイオームのエタノール代謝は、アルコール飲料等に含まれるエタノールを発がん性の高いアセトアルデヒドに変換し、口腔・咽頭における発がん因子の一つと考えられている。そこで前年度に暫定的にエタノール代謝能が認められた口腔Streptococcusを用いてその代謝条件を検討した。その結果、この口腔細菌は低濃度(0.05%)から高濃度(50%)に渡る広範囲の濃度のエタノールを代謝でき、高濃度になるほどアセトアルデヒド産生が増加することが明らかになった。これらのエタノール濃度は、飲酒における口腔内エタノール濃度に相当し、実際の飲酒において口腔細菌がアセトアルデヒドを産生することを支持した。高エタノール濃度(20%~)では細菌が死滅しはじめるものの、アセトアルデヒド産生は維持・継続した。以上のことから、エタノールは飲酒程度の濃度ではアセトアルデヒドの産生基質となること、そして高濃度になってはじめて殺菌効果を表すという2面性をもつことが明らかになった。葉物野菜に多く含まれる硝酸塩は口腔マイクロバイオームによって亜硝酸塩に代謝され、亜硝酸塩は小腸より血液循環に吸収されて全身の血管を拡張することで高血圧を予防すると考えられている。そこで前年度に暫定的に亜硝酸塩産生活性が認められたActinomycesとSchaaliaを用いてその産生条件を検討した。これらの口腔細菌は酸性環境、乳酸存在下で亜硝酸産生活性が高く、亜硝酸塩が抗菌活性をもつことを考慮すると、齲蝕発症因子に対し、拮抗的に作用しているものと考えられた。加えて、これらの口腔細菌は亜硝酸塩をさらに分解する代謝活性をもつことが明らかになり、口腔内における硝酸塩/亜硝酸塩代謝バランスに新たな視点を与えることとなった。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症によって、当初、研究協力者の事情により、研究の進捗が遅れたが、最終的には、おおむね当初予定していた研究計画通りの進捗となったため。
ボランティアを募り、研究倫理審査に基いてインフォームドコンセントを得たのち、口腔マイクロバイオーム(プラーク)を採取し、口腔マイクロバイオームによるエタノールからのアセトアルデヒド産生活性、さらにアセトアルデヒドの分解能を測定し、個人差を見る。試料の残りからエタノール産生能、アセトアルデヒド分解能を持つコロニーを検出し、菌種を同定する。口腔マイクロバイオームによる硝酸塩代謝活性についても並行して行い、亜硝酸産生能とともに亜硝酸塩分解能を測定し、個人差を見る。さらに、これらの活性能をもつ細菌を同定する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 7件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 14件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 14件、 招待講演 7件)
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