研究課題
急性期脳梗塞患者1,144人(年齢74.3±12.5歳、女性41.8%)を対象に、EQ-5D-5Lを用いて生活の質(quality of life:QOL)の評価を行った。EQ-5D-5LのQOLスコア中央値(4分位値)は9(6-15)(QOL換算:0.67±0.27)、5項目のQOLスコアは移動の程度2(1-4)、身の回りの管理1(1-3)、ふだんの活動2(1-4)、痛み/不快感1(1-2)、不安/ふさぎ込み1(1-2)であった。各項目のQOLスコアは、移動の程度、身の回りの管理、ふだんの活動については相互に項目間で相関していた(相関係数ρ0.80-0.91)。一方、痛み/不快感(ρ0.37-0.58)、不安/ふさぎ込み(ρ0.31-0.53)については、他項目との相関はやや低かった。さらにQOLと患者要因の関係について検討した。QOL値は年齢(ρ0.36)、退院時National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコア(ρ0.59)、退院時modified Rankin scale(mRS)スコア(ρ0.73)と正の相関がみられたが、body mass index(BMI)とは負の相関(ρ-0.23)が見られた。NIHSSスコアは、移動の程度(ρ0.57)、身の回りの管理(ρ0.60)、ふだんの活動(ρ0.60)との相関は強かったが、痛み/不快感(ρ0.27)、不安/ふさぎ込み(ρ0.21)との相関は弱かった。日本人脳梗塞患者における発症後QOLの低下の状況が明らかになった。急性期脳梗塞患者に対しては、いかに退院時の神経学的症状を軽減し、身体障害の程度を軽減しうるかが、QOLの低下を防ぐために重要と考えられる。一方、BMIはQOLと負の相関が見られており、高齢者におけるサルコペニア、フレイルや低栄養等がQOLに悪影響を及ぼしている可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
我が国において、脳梗塞患者のQOL低下の実態を調査した。また、QOLの低下と各患者要因の相関について明らかにした。
今後は、脳卒中後QOL低下に関連する全ての因子を網羅的かつ探索的に検討する。そのため、種々の社会的因子、神経徴候、病巣部位、併存症/合併症等の因子を調査する。機械学習手法を用いて、全ての因子とQOLの関連について検討する。また関連が強い因子については、QOLにどのような影響を及ぼしているかを検討する。さらに、これらの因子を用いて予測モデルを作成し、関連因子による脳卒中後のQOL予測を行う。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
Stroke
巻: 53 ページ: 70~78
10.1161/STROKEAHA.120.033751
Cerebrovascular Diseases
巻: 50 ページ: 390~396
10.1159/000514368
巻: 52 ページ: 2621~2628
10.1161/STROKEAHA.120.031392
Neurology: Clinical Practice
巻: 11 ページ: e809-e816
10.1212/CPJ.0000000000001087