研究課題/領域番号 |
21H03190
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
鈴木 武博 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (60425494)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒ素 / 妊娠期曝露 / DNAメチル化 / 生殖細胞 |
研究実績の概要 |
2022年度は、前精原細胞、A型精原細胞の単離法の条件について検討した。前精原細胞は、妊娠18日目のマウス胎児精巣から抗Thy1抗体が結合した磁気ビーズを用いてMSカラム(ミルテニーバイオテク社)により単離した。A型精原細胞は、生後6日目のマウス精巣から抗CD49f抗体が結合した磁気ビーズを用いてMSカラムにより単離した。次に、単離した細胞が、前精原細胞とA型精原細胞であることを確認するために、それぞれの細胞に特異的なThy1またはCD49fの遺伝子発現をリアルタイムPCRにより検討した。その結果、Thy1は前精原細胞画分で、CD49fはA型精原細胞画分で有意に発現が高いことが確認された。また、A型精原細胞で発現していると報告されているGfra1、Nanos2、Plzfが、今回単離したA型精原細胞画分で前精原細胞画分と比較して有意に発現が高いことがわかった。これらの結果から、抗Thy1抗体と抗CD49f抗体で単離した細胞は、それぞれ前精原細胞とA型精原細胞が大部分を占めていることが確認できたと考えている。次年度、妊娠8日~18日に85 ppmの亜ヒ酸ナトリウム (NaAsO2) を飲水投与したC3Hマウス (ヒ素群) 及び対照群から得た、妊娠18日目のマウス胎児精巣および生後6日目のマウス精巣を用いて、前精原細胞とA型精原細胞を単離し、網羅的なDNAメチル化解析を行う予定である。 ヒ素曝露により世代を超えて継承される精子ゲノムメチル化変化部位の同定については、現在、追試も含めて、より詳細に解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022度は、前精原細胞については妊娠18日目のマウス胎児精巣から抗Thy1抗体が結合した磁気ビーズを用いて、A型精原細胞について生後6日目のマウス精巣から抗CD49f抗体が結合した磁気ビーズを用いて、単離する条件を検討した。また、単離した細胞が、前精原細胞とA型精原細胞なのかを確認するために、それぞれの細胞に特異的な遺伝子の発現をリアルタイムPCRにより検討した。その結果、Thy1は前精原細胞で、CD49fはA型精原細胞で有意に発現が高いことが確認された。また、A型精原細胞で発現していると報告されているGfra1、Nanos2、Plzfが、A型精原細胞で前精原細胞と比較して有意に発現が高いことがわかった。これらの結果から、本研究の抗Thy1抗体と抗CD49f抗体を用いる単離条件により単離した細胞は、それぞれ前精原細胞とA型精原細胞が大部分を占めていることが確認できたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに確立した前精原細胞、A型精原細胞の単離条件を用いて、DNAメチル化解析用のサンプルを調製する。具体的には、前精原細胞は、妊娠18日目のマウス胎児精巣から抗Thy1抗体が結合した磁気ビーズを用いて単離し、A型精原細胞は、生後6日目のマウス精巣から抗CD49f抗体が結合した磁気ビーズを用いて単離する。単離した前精原細胞、A型精原細胞からDNAを抽出し、RRBSライブラリを作成し、次世代シークエンス解析をおこなう。 ヒ素曝露により世代を超えて継承される精子ゲノムメチル化変化部位の同定については、前年度から引き続き、妊娠期ヒ素曝露したC3Hマウス (ヒ素群) 及び対照群の、仔世代 (F1)、孫世代 (F2)、ひ孫世代(F3)の17週齢オス精子ゲノムのDNAメチル化解析をおこなう。プロモーターやエクソンといったゲノム領域だけではなく、遺伝子領域にも着目し、F2及びF3のDNAメチル化変化とF1で観測されたDNAメチル化変化とを比較する。DNAメチル化変化が、どの世代まで、どの部位で伝わるのかを明らかにする。
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