研究課題/領域番号 |
21H03208
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
澤田 典絵 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策研究所, 室長 (00446551)
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研究分担者 |
山岸 良匡 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20375504)
中谷 友樹 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (20298722)
石原 淳子 麻布大学, 生命・環境科学部, 教授 (30415509)
高地 リベカ 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (60413085)
伊藤 ゆり 大阪医科薬科大学, 研究支援センター, 准教授 (60585305)
石井 有里 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策研究所, 特任研究員 (60727452)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | がん生存者 / 循環器疾患生存者 / 食事 / 生活習慣 / コホート研究 |
研究実績の概要 |
わが国で増加しているがん生存者・循環器疾患生存者の、罹患後の予後を改善する生活習慣・食習慣については、いまだエビデンスが少ない。そこで、本研究では、1990年開始の全国11保健所地域住民14万人(研究開始当時年齢40-69歳)の多目的コホート研究で行われている、複数回の食習慣・生活習慣に関するアンケート調査を用い、食事や生活習慣の罹患前後の変化を検討したうえで、がん・循環器疾患罹患生存者の、予後との関連を明らかにすることを目的としている。 令和4年度は、繰り返し調査の比較が可能な5年後調査と10年後調査を用いて、がん罹患前後の食事・栄養素摂取量の変化について検討した結果を論文化した。5年後調査(1回目)と10年後調査(2回目)の両方の調査票に回答した、男性33,643人と女性39,549人のうち、5年間で男性886人、女性646人ががんと診断された。1回目の摂取量に対する、1回目と2回目(5年間)の摂取量の差を相対変化量とし、エネルギー摂取量と2栄養素、16食品群(食品)について、がんサバイバー群と診断なし群の違いを重回帰分析により検討した。男性における、がんサバイバー群のエネルギー摂取の減少量は、診断なし群より大きかった(変化の中央値[四分位範囲] がんサバイバー群:-168 kcal/day [-640, 278] 、診断なし群:-33 kcal/day [-453, 380])( P < 0.001)。しかし、女性では、統計学的有意な差は認められなかった。また、男女とも、その他の相対変化量に統計学的有意な違いはみられなかった。がん部位別に検討すると、男性において、特に、大腸がん(β=-0.36)と胃がん(β=-0.45)でエタノール摂取量の減少が大きかったことを報告した。(Ishii et al. Sci Rep. 2023;13(1):982.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多目的コホート研究の追跡調査により、繰り返し調査の比較が可能な5年後調査と10年後調査を用いて、アンケート情報、食事・栄養摂取情報を付与し、がん生存者解析データベースの作成を行い、がん罹患前後の食事・栄養素摂取量の変化について検討を行い、がんサバイバー群の診断後の食事の変化は、診断なし群の食事の変化と概ね同様であることを論文化した。この結果より、がん罹患による食事変化の影響を受けず、がん罹患の予防要因として多く報告のある、大腸がんサバイバーのコーヒー摂取量および甘味飲料と予後との関連の研究計画を立て、データセットを作成した。また、がんサバイバーの食事変化と同様、循環器サバイバーの食事変化の解析に着手し、おおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、がん生存者の食事・栄養素摂取と予後との関連を明らかにするための解析手法の検討を行い、相対危険度を算出し、リスク因子・予防因子を明らかにしていく。これまでの検討をもとに、がん罹患による食事変化の影響を受けず、がん罹患の予防要因として多く報告のある、コーヒー摂取量および甘味飲料について、大腸がんサバイバーの予後との関連の研究計画を立て、データセットを作成した。2664人の大腸がんサバイバーのデータセットを用いる。また、がん生存者の検討と同様に、循環器疾患生存者の診断前後の食事・栄養素の変化を解析し、循環器疾患生存者の予後との関連を明らかにしていくための検討も推進する。
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