研究課題/領域番号 |
21H03213
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮石 智 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90239343)
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研究分担者 |
谷口 香 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40599784)
三浦 雅布 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (80616235)
高田 智世 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 准教授 (70310894)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イムノアッセイ / 法医物体検査 |
研究実績の概要 |
Myosin light chain (MLC)の検出による骨格筋の同定法では、当初はマイクロプレートを用いたダブルサンドイッチ法によるin-house developed ELISAとする計画であったが、ヒト心室筋MLC1を検出する臨床検査用市販試薬(キット)の応用に切り替えた。本年度の検討では、骨格筋はその部位に拘わらず十分量のMLC1を含有していることが認められた。なおこの試薬ではヒト骨格筋MLC1との交差が明らかにされており、肉眼で骨格筋を疑いうると考えられる大きさ(重量で0.01g程度)の組織片からのMLC1の定量的検出は理論計算上は可能である。また法医学実務への市販試薬の応用は、機関や人員の制限がなくなるのが利点である。 Tear specific protein (tear prealbumin, lipocalin 1, LCN1)に着目した涙液の鑑別法では、上述のような臨床検査試薬はなく、当初計画通りマイクロプレートを用いたダブルサンドイッチELISAを採用しつつ、検査法の汎用性の観点から、ラテックス凝集法で実用に耐える検出限界を得られるかも検討対象とした。市販の標準抗原と抗体から、検査法として確立できそうな反応性のある組み合わせを検討した。また、涙液は鼻涙管経由で鼻孔から体外に排出され得ることから、鼻汁との鑑別は特に重要になる可能性に配慮し、鼻汁特異的蛋白Odorant-binding proteinに着目した鼻汁鑑別法も同時に確立する方針として、市販の標準抗原と抗体との反応性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、研究計画において予期していなかった方法上のトラブルや、あるいは予想外の結果がでるということはなかった。しかしながら、新型コロナウイルスのパンデミックが研究活動を妨害した。前記ウイルスの感染拡大防止のため種々の行動制限が設けられたり厳格になったりした結果、これに不満をもったり忍耐ができず規範を守らない学生が頻出、不祥事担当教員としての対応業務が激増し、研究に充てる時間が圧迫された。なお、学生不祥事は対応を外部委託できるものではなく、また発生が予定されたものではないためバイアウト経費の運用対象にもならない。次年度も同じ事態に陥らない保証はなく、対応の方針は次項に記す。
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋の同定法では myosin light chain (MLC) の臓器特異性について検討する。法医実務においては死体由来の組織片が検査試料の場合もあり、死後変化も考慮した臓器特性の確認が必須となる。その後種特異性の検討へも研究を進める。 涙液の鑑別法では tear specific protein (tear prealbumin, lipocalin 1, LCN1) のダブルサンドイッチELISAを安定したアッセイ系として完全に確立したうえで、体液特異性について検討する。法医実務における混合瘢痕への対応に際しては、各種体液におけるLCN1の含有状況の把握が望まれる。種々の割合に涙液の混合が考えられる鼻汁については涙液と誤判する懼れがあるため、鼻汁鑑別法の確立を並行して目指すことで、涙液と鼻汁との鑑別も図る。その後は種特異性の検討へと研究を進める。なお、鼻汁鑑別法にもイムノアッセイの導入を計画しており、これは「法医学におけるイムノアッセイの再興と継承 -新しい法医物体検査法の開発を通して」という本研究の一部分ともなる。 なお、本年度に研究推進の障壁となった事象への対応策としては、実験補助に就業できる人材を確保し、可能な実験プロセスを補助者に実施して貰う。補助者に対する実験技術などの訓練には時間と労力を要するが、それにより、研究進捗に障壁が発生した場合でも影響が最小限となるよう努める。その財源は交付申請における謝金の費目を厚くすることで確保する。
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