• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

リンパ浮腫に続発するレンサ球菌での蜂窩織炎発症機序とその予防・緩和ケア対策

研究課題

研究課題/領域番号 21H03221
配分区分補助金
研究機関金沢大学

研究代表者

岡本 成史  金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (50311759)

研究分担者 須釜 淳子  藤田医科大学, 社会実装看護創成研究センター, 教授 (00203307)
小倉 康平  金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (00586612)
向井 加奈恵  金沢大学, 保健学系, 准教授 (30755335)
大貝 和裕  金沢大学, AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター(保), 准教授 (40706983)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードリンパ浮腫 / 蜂窩織炎 / 皮膚細菌叢 / モデルマウス
研究実績の概要

研究初年度においてリンパ浮腫発症マウスの作製を申請書に記載の計画書の通り進めてきたが、リンパ浮腫を一定期間発症させることができなかった。そのため、研究2年目の令和4年度では、作製方法自体の改良に時間を費やした。そして、マウスの鼠経リンパ節と膝窩リンパ節を結紮してリンパ節のうっ滞させ、その後X線照射させることで、数週間リンパ浮腫を発症し持続させることに成功した。研究3年目の今年度は、そのリンパ浮腫マウスを用いてリンパ浮腫を起こした部分とコントロールの健側部分の皮膚細菌叢を採取し、その相違について比較検討を行う予定である。
一方、研究2年目において、ヒトの再発性褥瘡の原因にブドウ球菌属細菌のドミナントな存在比率の上昇があり、その原因を検討したところ、一部のブドウ球菌種(Staphylococcus aureusとStaphylococcus caprae)の存在比率の突出が皮膚感染による皮膚傷害を増強させることを明らかにした。
我々は、この研究成果を参考にし、蜂窩織炎発症の原因としてリンパ浮腫による一部の細菌のドミナントな増殖が関与するのではないかと考えており、リンパ浮腫による細菌叢のα多様性の縮小と一部侵襲性細菌の増殖が蜂窩織炎を惹起させているのではないかと考えている。そこで、マウスリンパ浮腫発症部位の皮膚細菌叢の構成変化について、α多様性の減少とStaphylococcus 属細菌の存在比率の上昇の有無、さらには存在比率上昇に関与する皮膚の生理学的変化について綿密に観察を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究初年度にうまくできなかったリンパ浮腫発症モデルマウスの作製が昨年度無事に成功し、このモデルを用いてリンパ浮腫における皮膚細菌叢の構成変化と、蜂窩織炎発症リスクの上昇に関わる原因究明にとりかかることが可能となった。研究の進捗状況は当初の予定より少し遅れているものの、リンパ浮腫発症モデルマウスの作製がこの研究遂行における律速段階であると想定していたこともあり、その作製が研究2年目に目途がついたことで、今後の研究が順調に遂行されることが考えられる。

今後の研究の推進方策

1.改良型リンパ浮腫発症マウスにおけるマウス皮膚の性状変化:鼠径・膝窩・腸骨・腋窩リンパ節を閉鎖することで四肢に重症のリンパ浮腫を発症する改良型リンパ浮腫発症マウスと健常なマウスを用いて,リンパ浮腫の有無による以下の変化について比較検討する.
・解剖学・病理学的変化:皮膚表層の乾燥,発赤,腫脹,潰瘍など有無を実体顕微鏡などで観察する.さらに皮膚組織標本を作製し,各種染色により表皮ならびに皮下組織における病理組織学的変化を観察する.以上より,リンパ浮腫により角質層,皮下組織の構造的な乱れが生じ,バリア機能の脆弱性を示す変化を示すか否かを検討する.・生理学的変化:皮膚表層の水分量,皮脂量,経表皮水分蒸散量,表皮のpHについて各種測定機器を用いて測定し,リンパ浮腫により皮膚にどのような変化が生じ,その変化が皮膚組織にどのような影響を与えると考えられるのかを検討する.・生化学・免疫学的変化:皮膚部分を採取して,そこからDNA, RNAを抽出し,マイクロアレイにより,サンプル中の炎症蛋白質,サイトカイン,ケモカイン,その他ケミカルメディエーターをコードする遺伝子発現の変化を観察する. ・生物学的変化:皮膚表層には細菌叢が存在する.その細菌叢がリンパ浮腫によってどのような変化を示すかをマイクロバイオーム解析によって検討する.
2.ヒトと改良型リンパ浮腫発症マウスにおけるリンパ浮腫部分での皮膚性状の比較検討
重症のリンパ浮腫患者ならびにリンパ浮腫に罹患していない健常者について,リンパ浮腫発症部分の皮膚性状の比較検討を行う.方法は1.の記載内容に準ずるが,ヒトでの測定が不可能な皮膚の病理組織検査は,超音波エコー検査に置換えて行う.1.2.の研究結果より,改良型リンパ浮腫発症マウスのリンパ浮腫部分の皮膚とヒトでのリンパ浮腫の皮膚の性状を比較する.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Interspecies Regulation Between Staphylococcus caprae and Staphylococcus aureus Colonized on Healed Skin After Injury2022

    • 著者名/発表者名
      Ogura Kohei、Furuya Hiroka、Takahashi Natsuki、Shibata Kana、Endo Maho、Watanabe Shinya、Cui Longzhu、Miyoshi-Akiyama Tohru、Okamoto Shigefumi、Ogai Kazuhiro、Sugama Junko
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 13 ページ: 818398

    • DOI

      10.3389/fmicb.2022.818398

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 褥瘡治癒部に存在するとされる黄色ブドウ球菌とその培養レスタイピング法2023

    • 著者名/発表者名
      古屋紘花、小倉康平、大貝和裕、須釜淳子、 岡本成史
    • 学会等名
      第34回日本臨床微生物学会
  • [学会発表] ヒト皮膚に常在するStaphylococcus capraeの病原性スイッチ2023

    • 著者名/発表者名
      小倉 康平,古屋 紘花,高橋 夏樹,岡本 成史,大貝 和裕,須釜 淳子
    • 学会等名
      第96回日本細菌学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] Skin physiology and two staphylococci associated with the recurrence of pressure injuries.2022

    • 著者名/発表者名
      Kohei Ogura, Hiroka Furuya, Natsuki Takahashi, Shigefumi Okamoto, Kazuhiro Ogai, Junko Sugama.
    • 学会等名
      Skin Ageing & Challenges 2022
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ブドウ球菌をターゲットとしたシーケンス解析による褥瘡治癒部Staphylococcus aureusの検出とPCRによるタイピング2022

    • 著者名/発表者名
      古屋紘花、小倉康平、大貝和裕、須釜淳子、 岡本成史
    • 学会等名
      第59回日本細菌学会中部支部総会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi