研究課題/領域番号 |
21H03281
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中西 三春 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (40502315)
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研究分担者 |
宮本 有紀 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (10292616)
山崎 修道 公益財団法人東京都医学総合研究所, 社会健康医学研究センター, 副参事研究員 (10447401)
中島 民恵子 日本福祉大学, 福祉経営学部, 准教授 (70503085)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 認知症 / アドバンス・ケア・プランニング / 緩和ケア |
研究実績の概要 |
当初は、令和5年度に実践プログラムの効果検証を、令和6年度に普及啓発プログラムの効果検証を行う予定であったが、海外における研究滞在により令和5年度の研究を中断した。 令和5年度の中断までに実施した研究において、認知症の人と家族にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の受容性を尋ねるインタビュー調査で収集した質的データの分析を行った。インタビューではACPの2つのアプローチ、(1)将来の治療に対する具体的な指示(例:心肺蘇生をするかしないか)と(2)ケアの目標や価値観の共有、のどちらを選好するかを聴取した。その結果、本人家族は(2)が望ましいと考える一方で、(1)の方が従事者にとっては受け入れやすいのではないかと考える傾向があった。 海外における研究滞在では、実践プログラムと普及啓発プログラムの基本骨子となる、認知症におけるACPの定義の国際的なコンセンサスを得た。コンセンサスにおいて、ACPの認知症に特有なポイントとして意思決定能力のアセスメントと支援、本人の参加とコミュニケーション、および認知症の進行過程によって家族の役割が変化すること、の3点があげられた。また同じ海外専門家パネルの合意に基づき、ACPの推進に向けた政策と研究の国際提言を発表した。自分のことを自分で決める権利は基本的人権として認知症であっても本来守られるべきであることや、認知症ACPの目的は本人がより良く生きることにあることなど、理念や基本的な考え方について確認された。研究としては、認知症に特化したACPの実践モデルの開発やエビデンスの蓄積が必要とされていた。政策課題としては、医療介護制度において認知症の人が包摂されるモデルの構築が求められていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
海外における研究滞在により研究を中断していたため。また実践プログラムと普及啓発プログラムの共通骨子となる国際ガイドラインの策定が進行中のため。国際ガイドラインは①認知症におけるアドバンス・ケア・プランニングの定義のコンセンサス、②臨床ガイドライン、③政策と研究の提言で構成されている。①コンセンサス、③政策と研究の提言は策定されたが、臨床ガイドラインは未だ確定に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、これまでに確立された認知症アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の国際ガイドラインに沿って、実践プログラムおよび普及啓発プログラムのプレテスト版を作成する。少人数の従事者および認知症の人・家族介護者を対象として、プログラムの実施可能性と受容性を検証する。プレテストの結果をふまえてプログラムに必要な改訂を加える。令和7年度は改訂版プログラムの効果検証を実施する。実践プログラムでは従事者を対象とした研修を実施し、研修の前後比較を行う。国際ガイドラインの策定過程において明らかとなった、ACPで認知症の人と家族介護者との話し合いをもつことへの従事者の心理的ハードルをアウトカムとする。普及啓発プログラムでは、国際ガイドラインの共同研究者らが開発した普及啓発ウェブサイトを参考に情報発信の媒体を作成し、一般高齢者を対象としたウェブ調査でユーザビリティを検証する。以上により、認知症とともに生きる希望をもち続けることを支援するアドバンス・ケア・プログラムの推進システムについて、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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