研究課題
介護施設において認知症の人の意思を尊重したケアを実践するためには、介護職・看護職がその人の認知機能に合わせて意思を引き出す「関係を前提とした自律(relational autonomy)」の支援が必要である。そこで、介護職が日常ケアの中から、認知症の人の行動から「意思」を推察しようとしているか、しているとしたら、どのような場面でどのように対応しているのか把握する調査を実施した。全国の認知症対応型共同生活介護と地域密着型介護老人福祉施設から4000か所(抽出率24.3%)を抽出し、事業所長宛に調査票を郵送、介護職リーダーに回答を依頼し、webでデータ収集した。所属の倫理委員会承認後に実施した。調査方法は、一般的に介護職が対応を困難と感じる2つの場面(①入浴したがらない、②就寝後部屋から出て歩く場面)に関するビネットを提示し、各場面で認知症の人の思いを探る対応をするかしないか、する場合にはどのように対応するか自由記述を求めた。分析は、ケア提供者の言動に分節化してコード化し、ケア提供者の意図を解釈してカテゴリー化した。その結果、「安心感のある関係づくり」がケアの前提として必要とされ、入浴や就寝とは関係ない話題や行動で過ごしながら、思いに近づく情報を収集していた。その方法は、本人に直接理由を聞く「主観的世界の探索」と、記録などから探る「客観的情報からの推測」があった。入浴や就寝まで段階や時間をかけて、ケアを受ける意思がみられるまで「本人が受け入れやすい提案をし続けて待つ」一方で、ケア提供者の「意図通りにならないことを許容」する記述も多くみられた。ケア提供者は、認知症の人との安心感のある関係を前提として、探索、推測、提案して待つなど、本人の意思に近づく様々な方略があることを示した。この内容は、日本認知症ケア学会第24回大会で発表する予定である。
2: おおむね順調に進展している
covid19への対応のため、参加観察から調査に方法を変更し、データ収集ができた。今後はこのデータを基に、ガイドの作成と実施可能性の確認を行う。
収集されたデータを分析し、それに基づき、学会発表や研究会で議論した上で、関係に基づく自律支援のためのケアガイドを作成する。実践現場でのケアガイドの実施可能性を検討し、介入研究を実施する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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