研究課題/領域番号 |
21H03291
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
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研究分担者 |
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
本田 祐一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 助教 (40736344)
片岡 英樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (50749489)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 運動器不活動症候群 / 疼痛 / 拘縮 / 筋萎縮 / 骨萎縮 |
研究実績の概要 |
本年度は,骨格筋由来の運動器不活動症候群(以下,ILSs)の発生メカニズムに関わる分子機構を明らかにするとともに,骨萎縮の病態に関しても検討し,介入戦略の効果検証のための指標としての有用性を評価した. 不活動モデルはラット後肢を1,2週間ギプスで固定することで作製し,固定期間中は毎週ギプスを除去し,覚醒下において足底部の表在痛ならびに腓腹筋の圧痛閾値を評価し,その後,麻酔下で足関節背屈可動域を評価した.そして,1,2週間のギプス固定終了後はヒラメ筋を採取し,組織学・生化学・分子生物学的検索に供した.また,大腿骨も採取し,μCTによる骨微細構造の評価ならびに骨強度試験に供した. 結果,これまでの先行研究同様,不活動によって表在痛や筋痛ならびに足関節背屈可動域制限(拘縮)が惹起され,作製した実験動物モデルにはILSsが発生しているといえる.そして,ヒラメ筋を検索した結果,不活動によって惹起される筋核のアポトーシスは活性型caspase-3の発現が関与しており,これにはミトコンドリア融合因子の mitofusin(mfn)-1の発現低下と分裂因子の dynamin-related protein(drp)-1の発現亢進に起因したミトコンドリアDNA(mt DNA)の減少が関与することが明らかとなった.つまり,不活動による骨格筋の代謝機能障害が骨格筋由来のILSsの発生メカニズムに関わる重要事象であると推察される. 加えて,大腿骨標本の検索の結果,不活動に曝すと皮質骨,海綿骨のいずれも力学的に脆弱となり,骨微細構造としては海綿骨における骨梁低下や骨密度低下を示唆する所見が認められた.つまり,これらの指標はILSsに対する介入戦略の効果検証において有用といえ,次年度以降の研究において活用する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果として,骨格筋由来のILSsの発生メカニズムにミトコンドリアの機能不全ならびにそのことに基づく骨格筋代謝機能障害が関与することが明らかになった.この結果は当初の仮説通りであり,そのエビデンスデータを輩出できたことは十分な成果である. 加えて,不活動によって惹起される骨萎縮の病態像も明らかとなり,介入戦略の効果検証に活用できる指標も明確になってきたことも十分な成果である. このように,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋の不活動によるミトコンドリア機能不全には,今年度明らかにしたメカニズムに加え,①caspase-8の活性化によるアポトーシス促進タンパク(Bid)の開裂と活性型Bid(tBid)のミトコンドリアへの移動,②AMPKの産生低下とPGC-1αの発現減少なども関与すると仮説しており,次年度はこれらの検索を進め,骨格筋由来のILSsの発生メカニズムに関わる分子機構を整理する予定である. また,令和5年度以降に予定しているベルト電極式骨格筋電気刺激(B-SES) を活用したILSsの介入戦略に関する予備実験として,B-SESの刺激条件について検討する予定である.
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