研究課題/領域番号 |
21H03318
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
増田 和実 金沢大学, 人間科学系, 教授 (50323283)
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研究分担者 |
芝口 翼 金沢大学, GS教育系, 助教 (40785953)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 筋細胞 / ミトコンドリア / ミオグロビン / 相互作用 / タンパク質輸送 |
研究実績の概要 |
運動による筋のミトコンドリア(Mito)での基質酸化能力の向上は重要な要素である。我々は細胞質の酸素結合タンパク質であるミオグロビン(Mb)がMitoに内在していることを見出した。本研究では、MbとMitoの相互作用に関わる分子機序の解明を目指して、MbとMitoの単離・精製と細胞生物学的解析やMitoのタンパク質輸送過程の解析を行うことや、骨格筋Mitoの生合成を促す機序を分析することを目的とした。 本年度(R3)では、骨格筋培養細胞を用いた実験系の検証と確立を図った。C2C12筋管細胞から単離したMitoを用いてProteinase K-Protection Assay(PK-PA)法によって、MbがMitoに内在していること、Mito膜間腔に存在することを確認した。このことはラット骨格筋組織から単離したMitoでも確認された事実を支持するものであり、C2C12細胞を用いてタンパク質の発現調節しながら本研究の遂行が可能であることを示す。このようなC2C12細胞のMitoを用いて共免疫沈降法(Co-IP)を実施し、Mito外膜に存在するタンパク質輸送体:TOM複合体とMbとの相互作用を検討した。その結果、TOM複合体のサブユニットであるTom20およびTom70とMbとが相互作用していることを示唆する結果を得た。また、MbがHSP72と相互作用している可能性も明らかとなった。これらの結果は、Mbが分子シャペロン(HSP72)による輸送補助を受けながらTOM複合体へ受け渡され、その後、TOMを通過してMito内部へ取り込まれている可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では骨格筋培養細胞を用いてMbやMitoのTOMサブユニットタンパク質の発現調節を行うことを通じてMbのMitoへの輸送機構を検証することを含んでいる。そこでC2C12細胞のMitoのタンパク質量(単離した場合の回収量)やMb量を予備的に検証し、PK-PA法の条件検討(PK濃度とTom20の消化の関係性)を行った。これらの解析では計画に遅れを来すようなトラブルはほとんどなく、Mito内のMbの存在を確認できたこと、そして、その実験条件の確立を図ることができた。siRNAによる発現量抑制細胞(C2C12細胞)を作成しようとしているが、抑制程度が期待するレベルに至っていないため、引き続き検証を重ねている。十分な発現抑制条件が得られれば、TOM複合体を通過するタンパク質やMbの輸送量を検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の検討課題の中で重点的に進めたい点は、MbがMitoへ輸送される際にTOM複合体を通過しているのか、それとも別の輸送経路なのかを明らかにすることである。筋細胞の遺伝子操作が確立され次第、TOM複合体サブユニットが発現抑制された際のMito内在型Mb量の変化(減少するか否か)を検証する計画である。また、Mito内在型Mbの多寡に応じてMito呼吸機能(O2消費機能)が変化するかを高感度酸素電極を用いた専用装置(Oxygraph-2k)を用いて検証する。その機能変化が生じていれば、ミトコンドリアの代謝基質や膜電位などにが変化している可能性もあるので、メタボローム解析によってMbの多寡がTCA回路の鍵となるMito内の基質変動に影響を及ぼすか検証する。また、動物実験(ラットやマウス)による運動トレーニングモデルの骨格筋からMitoを単離し、運動によるMito内在型Mb量の挙動やTOM複合体量の変化を検証するとともに、運動によるMito機能の亢進の機序を検証する予定とする。
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