筋のミトコンドリア(Mito)の基質酸化能力の向上は細胞機能の恒常性にとって重要な要素である。R4年度までに細胞質の酸素結合タンパク質であるミオグロビン(Mb)がMitoに内在し、呼吸鎖複合体との相互作用を通じてMito呼吸機能を高めている可能性を見出した。R5年度では、ラット骨格筋におけるMito内のMb-COXIV相互作用に対する持久的トレーニングの効果を検証することを目的に、持久性トレーニングを負荷したラット骨格筋からMitoを単離し、Mitoに内在するMbを定量比較した。8週齢の雄性Wistarラットに6週間のトレッドミルを用いた持久性ランニングトレーニングを実施した後、足底筋を摘出し、Mito単離や生化学的分析に用いた。持久性トレーニング後の骨格筋ではMito含量が増加した。また、単離Mitoにおいて、複合体IV依存性の酸素消費量と複合体IV活性が上昇していた。さらに、持久性トレーニングは全筋レベルでのMb発現を増加させたと共に、Mito内在型Mb量とMb-COXIV相互作用を増加させた。これらの知見は、持久性トレーニングによって誘発されるMito内在型Mbの増加に伴うMbとCOXIVとの相互作用の亢進が、複合体IV活性を向上させてMito呼吸調節に寄与している可能性を示唆している。
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