研究課題/領域番号 |
21H03340
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 光 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30896832)
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研究分担者 |
中澤 公孝 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90360677)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 歩行 / 脳波 / MRI / 脳深部 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はヒト二足立位歩行の制御における中脳・視床などの脳深部領域の役割を最新の脳波計測・解析技術を組み合わせ解明することである。 近年 、高密度脳波測定とMRI(Magnetic Resonance Imaging)画像に基づく被験者ごとの詳細な脳モデルを組み合わせた手法により、脳深部電気活動を非侵襲的に測ることが可能と証明された。さらに、不可能と考えられていた歩行時の脳波測定も革新的手法により測定が可能となった。 こ れらの手法により歩行時の脳深部活動を測定し、大脳皮質や筋など他領域との関係性からヒト歩行制御における脳深部領域の役割を解明する。
本年度はまず、脳波とMRIを組み合わせた脳深部の電気活動推定手法の習得を進め、実際に使えるようになった。実際に先行研究で使用されている複数のdistributed source estimation 法の使用が可能となった。また、被験者の頭部のMRI解剖画像の取得を進め、20人弱のデータを得ることできた。このデータと今後取得予定の脳波信号を組み合わせることで脳深部の電気活動を推定することが可能となる。 また、脳深部の電気活動推定手法の精度検証を行ことを目的にヒト頭部のMRI解剖画像に基づいて 、寒天とNaClを使用し、実際のヒト頭部の導電率を考慮した頭部ファントムを作成した。MRI画像から3Dプリンターを使用して各組織を寒天で成型するするための型を作成し、頭部寒天ファントムを使用した脳深部の電気活動推定の精度検証実験の準備はほぼ完了した。 また、脳深部と脊髄活動の関係性を調べるために、まず脊髄活動を調べる手法の確立も行なった。高密度筋電図とBlind source separationを組み合わせ脊髄運動ニューロンの発火活動を推定する手法を習得し、前脛骨筋の活動を調べた研究を国際誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の大きな進捗としては、本研究の根幹技術である脳波とMRIを組み合わせた脳深部の電気活動推定手法が使用可能になったことである。 また、研究開始時は脳深部の電気活動推定の精度検証を実際に脳内に電極を留置したパーキンソン病患者から実際に記録した信号と、脳波とMRIから推定した信号を比較することで行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの影響により病院での実験は困難な状況であった。代替手法として、寒天とNaClを使用し、実際のヒト頭部の導電率を考慮した頭部ファントムを使用することを思いつき、脳深部で発生した電気信号の脳波とMRIを組み合わせた推定法の精度検証実験の準備を完了することができた。 また、初年度にも関わらず国際誌に1報論文を出版することができた。 当初の計画とは変更した部分はあったものの初年度としてはかなり順調な進捗である。以上を総合的に考慮し、上記自己評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はまず、脳波とMRIを組み合わせた脳深部の電気活動推定手法の精度検証を行う。ファントムの作成は昨年度にほぼ完了しているので、今年度はまず脳信号を模した電気信号の生成装置の作成を行い、フ ァントム内に埋め込む。そして、ファントム・電気信号生成装置・脳波信号記録装置を同時使用し、脳深部から発生した電気信号を頭表に置いた脳波電極から記録する。そして、昨年度習得を進めた、脳波から脳深部電気信号推定する手法の精度を検証する。複数の手法(LAURA法, IRES 法, Dipole法)を用いて脳波から脳深部活動推定を行い、脳深部に留置された電極から生成した信号と比較することで最適な脳深部活動推定手法を特定する。 年度の後半には、実際の歩行時の脳深部推定に関する実験を開始する予定である。
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