研究課題
尿酸はヒトにおけるプリン体の最終代謝産物であり、その体内量を適切に維持することが高尿酸血症や痛風の予防・健康維持にとって重要である。尿酸の体内動態制御には、尿酸輸送体の働きが必須であることが知られているが、2010年代初頭までに見出された尿酸輸送体だけでは、その全容の説明は困難であり、未知の尿酸輸送体の存在が確実視されていた。新規尿酸輸送体としてOAT10とGLUT12を新たに見出すことに成功してきた申請者らは、その病態生理学的重要性の理解を糸口として、尿酸動態制御機構の全容理解にむけた課題を解決することを目指し、本研究を進めている。初年度における代表的な成果等を以下に記す。OAT10に関する検討を進め、ヒト腎臓切片に対する免疫組織化学の検討の結果、近位尿細管の管腔側膜にOAT10が局在することが見出された。また、臨床検体の解析の結果、OAT10の機能欠損型変異を持つ集団では尿中尿酸排泄が高値を示すことが明らかとなった。OAT10の輸送特性に関する検討を進めながら、成果のまとめを視野に入れつつ研究を進めている。GLUT12については、本輸送体が尿酸のみならず、ビタミンCの輸送体としても機能しており、血中から脳へのビタミンC供給に関わる生理的に重要な排出型のビタミンC輸送体でもあったことを報告した。また、生理学的に重要な尿酸輸送体URAT1の阻害活性を有する天然成分の探索・同定について成果を報告した。さらに、血清尿酸値や痛風のサブタイプと関連する遺伝要因に関する新たな成果を報告した。これら一連の成果は、尿酸動態制御機構の全容理解に貢献するものであり、本研究の進展と合わせて、さらなる発展が期待される。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初の計画に合わせた実験実施が困難となったものがあるため、実施予定の内容を後回しにした項目がある。一方、異なるアプローチや成果の取りまとめなど、他の項目と優先順位を入れ替えることで臨機応変に研究を進めている。論文発表という形で関連成果を報告することにも成功しており、翌年度以降も新たな成果を報告できる見込みである。引き続き研究を進めていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
今年度までの研究を引き続き発展させるほか、分子遺伝疫学的解析にも取り組む予定である。また、現在投稿準備中の論文については、できる限り早い段階でのアクセプトを目指して研究を進めるとともに、これまでに発表した成果について、より広く社会に向けて発信することを試みる。本研究をさらに発展させることで尿酸動態制御機構の全容理解に貢献できるよう、研究分担者らとの連携を深め、多角的な視点から研究を進める計画である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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https://researchmap.jp/read_toyoda/
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