研究課題
尿酸はヒトにおけるプリン体の最終代謝産物であり、その体内量を適切に維持することが高尿酸血症や痛風の予防・健康維持にとって重要である。尿酸の体内動態制御には、尿酸輸送体の働きが必須であることが知られているが、2010年代初頭までに見出された尿酸輸送体だけでは、その全容の説明は困難であり、未知の尿酸輸送体の存在が確実視されていた。新規尿酸輸送体を新たに見出すことに成功してきた申請者らは、その病態生理学的重要性の理解を糸口として、尿酸動態制御機構の全容理解にむけた課題を解決することを目指し、本研究を進めている。2022年度における代表的な成果等を以下に記す。OAT10が血清尿酸値制御に関わる生理学的に重要な尿酸輸送体であり、URAT1と並んで尿からの尿酸再吸収を担うことを学会および論文発表した。OAT10が新規尿酸降下薬の標的候補となり得るという点から、今後の尿酸降下薬開発においても重要な知見であると考えられる。腎性低尿酸血症の新規病因変異をGLUT9遺伝子(腎臓において尿から血液への尿酸再吸収を担う膜輸送体をコードする)の非コーディング(イントロン)領域に初めて見出し、論文発表した。ビタミンC輸送体であるSVCT1が、生理学的に重要な尿酸輸送体でもあることを論文発表した。臨床診断された痛風およびそのサブタイプ症例について、遺伝学におけるパラメータ推定を行うことで得られた遺伝率(遺伝型の加法的な効果で説明できる表現型の分散が表現型全体の分散に占める割合として定義される量)を世界に先駆けて論文発表した。これら一連の成果は、尿酸動態制御機構の全容理解に貢献するものであり、本研究の進展と合わせて、さらなる発展が期待される。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に引き続き、論文発表という形で関連成果を報告することに成功しており、翌年度以降も新たな成果を報告できる見込みである。引き続き研究を進めており、全体の進捗状況はおおむね順調であると考えられるため、おおむね順調に進展していると判断した。
研究3年度目となる次年度(2023年度)では、今年度(2022年度)までに得られた成果をさらに発展させる。また、現在投稿(準備)中の論文については、できる限り早い段階でのアクセプトを目指して研究を進めるとともに、これまでに発表した成果について、より広く社会に向けて発信することを引き続き試みる。本研究をさらに発展させることで尿酸動態制御機構の全容理解に貢献できるよう、研究分担者らとの連携をよりいっそう深め、今後も多角的な視点から研究を進めることを基本的な方針とする。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) 備考 (2件)
Frontiers in Genetics
巻: 13 ページ: 1048330
10.3389/fgene.2022.1048330
Pflugers Archiv - European Journal of Physiology
巻: 475 ページ: 489~504
10.1007/s00424-023-02792-1
Frontiers in Pharmacology
巻: 13 ページ: 842717
10.3389/fphar.2022.842717
Rheumatology
巻: - ページ: -
10.1093/rheumatology/keac597
https://researchmap.jp/read_toyoda/
http://ndmc-ipb.browse.jp/member.shtml