研究課題/領域番号 |
21H03356
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
清水 英寿 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (10547532)
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研究分担者 |
石塚 敏 北海道大学, 農学研究院, 教授 (00271627)
橋口 亜由未 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (00805195)
吹谷 智 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (10370157)
吉清 恵介 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (30510739)
田中 愛健 九州大学, 農学研究院, 助教 (90809435)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インドール系化合物 / インドール酢酸 / スカトール / CYP1A1 / SLC26A3 |
研究実績の概要 |
本研究では、「腸内細菌代謝産物に焦点を当てた高食肉摂取による健康増進と病態発症の分岐点の解明」に向け、腸内で産生されるインドール系化合物の一種、インドール酢酸とその代謝産物であるスカトールを中心に、肝臓および腸管への影響について解析を行っている。 培養肝がん細胞を用いた解析では、スカトールは、その受容体として報告されているAryl hydrocarbon receptor (AhR)の活性化を介するだけでなく、ある核内受容体型転写因子の活性化も介して細胞増殖を導くことが明らかとなった。また我々は、スカトールによって発現増加する長寿遺伝子の1つであるSirt1が、培養肝がん細胞の増殖を導く結果を得た。 培養大腸がん細胞を用いた解析では、スカトールは、Nuclear factor-kappa B(NF-kappaB)の活性化を介してInterleukin-6(IL-6)の発現増加を導いた。またスカトールは、Tumor necrosis factor alpha(TNFalpha)を発現増加させる一方、インドール酢酸に関しては、その発現低下を導くことを我々は報告している。このTNFalphaの発現低下メカニズムとして、TLR4が関与していることが示唆された。さらにインドール酢酸は、AhRの活性化を介して、腸管上皮内腔膜の塩化物-炭酸水素交換体としてNa+/H+交換体とともに腸管での電気陰性NaCl吸収に関与しているsolute-linked carrier 26(SLC26A3)の発現増加を誘導することが明らかとなった。SLC26A3の発現低下は、炎症性腸疾患や大腸癌で観察されることから、インドール酢酸はこれら病態に対する予防および改善に寄与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養肝がん細胞を用いた解析から、スカトールの新たな受容体となり得る候補分子が同定できた。一方、インドール酢酸については、培養大腸がん細胞を用いた解析から、TLR4がその新たな受容体の候補となり得る可能性を示された。これらの加え、大腸炎モデルマウスを用いたインドール酢酸の効果に関する解析も進んでいる。以上から、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
培養腸管細胞や培養肝細胞などの培養細胞に加え、ラットやマウスを用いて、インドール酢酸やスカトールの新規作用メカニズムのさらなる解析を進めていくことで、両インドール系化合物の作用メカニズムの違いを明らかにしていく。加えて、上述とは異なるインドール系化合物の作用にも今後は着目していく。
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