研究課題
日本は高齢化に伴い神経機能の低下による重大事故や神経変性疾患が増加している。しかし,老化にともない低下する神経機能や細胞形態の変容が,神経の変性へと至るプロセスに関する知見は乏しい。申請者は,タンパク質の代謝や異化に関わる酵素,Pin1の欠損マウス(Pin1 KO)を用い,その行動学,組織学解析を行ってきた。そして,Pin1 KOは,大脳と脊髄および末梢からの情報を統合する重要な領域である視床の神経細胞内にアミロイドが高度に蓄積されることを認めた。当該研究は,①Pin1 KOの表現型はどの神経変性疾患と類似するのか?,②視床のアミロイド封入体は視床の機能に影響するか?,③老化した神経細胞はどのような生理機能変容を有するのか?,④Pin1活性の修飾はどのような神経機能を変えるか?の4つの問いを明らかにし,Pin1の老化や神経変性疾患に対する役割を,視床の神経機能を中心に明らかにする。さらに老化したマウスから神経を単離し,細胞生理機能の加齢変化を直接明らかにする。既年度までにPin1 KOの表現型とヒト神経変性疾患との関連を剖検脳を用いた組織染色により調べてきた.その結果筋硬直性ジストロフィー患者剖検脳に認められるエオシン陽性視床封入体と免疫染色および形態染色の染色性が一致し,極めて性質が類似する封入体であることを認めた.本年度に,電子顕微鏡などを用いその性質を調べてきた.封入体は神経細胞の細胞質に限局して一定方向の線維の凝集体として認められた.
3: やや遅れている
当該年度に代表者が所属が変更となり,施設の立ち上げやセットアップなどの時間を要することとなった.その結果,視床の機能解析に若干の遅れを生じた.
申請者の移動に伴うセットアップは大筋終了した.そして,22年度後半には研究が開始できている.本年度は視床障害モデルの作成および視床に出入力する神経細胞の変容を調べる予定としている.
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 24 ページ: 3992~3992
10.3390/ijms24043992
International Immunopharmacology
巻: 117 ページ: 110039~110039
10.1016/j.intimp.2023.110039
Proceedings of the Japan Academy, Series B
巻: 99 ページ: 48~60
10.2183/pjab.99.004
Toxicology Letters
巻: 374 ページ: 40~47
10.1016/j.toxlet.2022.12.003
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology
巻: 43 ページ: e66~e82
10.1161/ATVBAHA.122.317781
Brain Research
巻: 1798 ページ: 148160~148160
10.1016/j.brainres.2022.148160
Scientific Reports
巻: 12 ページ: 10598
10.1038/s41598-022-14849-9
Neuroscience Research
巻: 182 ページ: 52~59
10.1016/j.neures.2022.05.007