研究課題/領域番号 |
21H03366
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
早川 清雄 日本医科大学, 医学部, 講師 (00368292)
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研究分担者 |
三好 規之 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (70438191)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 炎症 / マクロファージ / 自然免疫応答 / コレステロール |
研究実績の概要 |
脂質は、タンパク質や糖質と並び、生体にとって必須な物質である。脂質は、効率のよいエネルギー源として利用されるのみならず、ホルモンや細胞膜の材料としても利用され、またその代謝異常(脂質異常症)は動脈硬化症・糖尿病・慢性腎臓病などを惹起し、さまざまな病態と密接に関わっていることが明らかにされている。そのため、脂質分子が関わる細胞の生理機能を明らかにすることは、生命の原理を知る上でも、病態のメカニズムを理解する上でも大変重要な課題である。本課題では、疾患の基盤病態となる炎症応答に着目し、病態の進展と密接に関連するマクロファージの細胞内コレステロールが、TLRs-Myd88を介する自然免疫応答経路の調節因子として機能すること、さらにそのメカニズムの解明を目指し基盤的研究を進めてきた。これまでの解析結果から、1)炎症応答の増強には急速な細胞内コレステロールの蓄積が関与していること2)コレステロールの蓄積と細胞質アダプター分子、Myd88のオリゴマー形成の促進が関与していること3)動脈硬化モデルマウスに細胞内コレステロールの排泄を促進する薬剤としてポリロタキサン(PRX)を投与すると、プラークの形成やマクロファージの炎症応答が抑制されることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、細胞内コレステロールを炎症応答の調節因子と位置付け、その基盤的研究を進めている。これまでの解析結果から、炎症応答と細胞内コレステロールの関係性が明らかになりつつあり、さらに分子間の会合性に関する解析結果からコレステロール-Myd88を介した炎症応答の増強という新たな結果が得られた。現在、Myd88の関与について、免疫沈降法やリコンビナントタンパク質を用いて解析を進めると同時に、局在についても共焦点レーザー顕微鏡や蛍光顕微鏡等を用いて解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析結果から、炎症誘導に伴い細胞内コレステロールが急速に蓄積されることがGC-MS解析等により、明らかとなってきた。また、細胞内小器官におけるコレステロール量の変化も、共焦点レーザー顕微鏡や各オルガネラのGC-MS解析によりわかってきた。さらに、コレステロール排泄薬剤として用いたポリロタキサン(PRX)は、マクロファージを用いた解析から、細胞コレステロールを減少させ、炎症性サイトカインの発現を有意に抑制した。合成siRNAや異なるTLRリガントを用いたシグナル解析の結果から、コレステロールが関与する細胞内シグナル経路として、細胞質アダプター分子Myd88を介することがわかった。さらに、PRXを動脈硬化のモデル動物に投与すると、プラークの抑制ならびにマクロファージの炎症応答が抑制されることが、組織染色ならびにFACS解析により明らかとなった。本年度は、Myd88と細胞内小器官の局在変化ならびにコレステロールの変化を解析することを通して、炎症の慢性化に関わる脂質代謝の変化の一端を解明することを目指す。
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