研究課題/領域番号 |
21H03381
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
早田 匡芳 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 教授 (40420252)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 脂肪異栄養症 / 筋萎縮 / 運動神経 / 神経筋障害 / 破骨細胞 / 骨軟骨腫 |
研究実績の概要 |
これまでの研究において,タモキシフェン誘導性全身性核膜脱リン酸化酵素1(Ctdnep1)欠損マウスが、重症骨粗鬆症、脂肪異栄養症,神経筋障害の合併症を発症することを見出した。本年度の研究においては、神経筋障害について,詳細な解析を実施した。8週齢でタモキシフェンを投与し,Ctdnep1を全身性に欠損させたマウスを作製した。このマウスは,タモキシフェン投与30日以内に約50%が死亡し,寿命が短くなった。行動学的解析の結果、約11週齢のマウスでは運動能力が低下していた。予想外に、ワイヤーハンギングテストのスコアは握力や体重よりも早く低下した。HE染色の結果、神経細胞の核膜が不明瞭であった。神経細胞に対するNeuN抗体による免疫染色では、神経細胞の肥大が認められた。さらに、腰髄の免疫染色から、Ctdnep1欠損マウスでは細胞質に局在するTDP43とユビキチンの二重陽性の凝集が確認された。神経筋接合部では、シナプスに覆われたアセチルコリン受容体の面積が減少し、アセチルコリン受容体の断片化が起こった。前脛骨筋の形態学的観察から、Ctdnep1欠損マウスでは筋萎縮が認められ、再生筋繊維に核が集中することが特徴的であった。さらに、Ctdnep1欠損マウスでは、前脛骨筋の遅筋線維の割合が増加していた。Ctdnep1がTGF-βシグナル伝達を制御していることを考慮すると、観察された表現型はTGF-βシグナル伝達経路の異常な亢進に起因している可能性がある。この他,骨膜幹細胞でCtdnep1を欠損したマウスでは,骨軟骨腫を発症すること,Ctdnep1がRANKLシグナル伝達経路を抑制することにより、破骨細胞の分化を負に制御していることを明らかにした。以上のことから,核膜脱リン酸化酵素1遺伝子は、全身の健康維持のために非常に重要な役割を果たすことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究対象のKOマウスが、様々な症状を示すことが明らかとなり、核膜脱リン酸化酵素1が全身の健康維持に非常に重要な役割を果たしていることがわかってきた。さらに,組織特異的なKOマウスを作製し,現在解析中である。しかしながら、現在、表現型の解析にとどまっており、分子メカニズムまでは迫れていないため、「(2)概ね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、タモキシフェン誘導性の全身性ノックアウトマウスを用いていたが、本研究で見出した症状の原因となる組織を同定するために、組織特異的ノックアウトマウスを作製して、解析する。現在,運動神経,骨芽細胞,単球・マクロファージ,脂肪細胞特異的KOマウスを作製中である。これらのマウスの行動学的,病理学的解析を実施する。組織のトランスクリプトーム解析を実施し、異常なシグナル伝達経路を同定し、それらのシグナル伝達経路を化合物で操作することにより、症状を薬理学的に回復させることを試みる。これらの組織において、脂質代謝ホスファターゼカスケードに異常が生じているかどうかを検討するために、下流のリン酸化タンパク質レベル並びに脂質解析を実施する。さらに,Ctdnep1と相互作用するタンパク質を同定することにより,脂質代謝ホスファターゼカスケードの分子機序の全貌を明らかにする。
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