研究課題/領域番号 |
21H03437
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
上山 憲昭 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (90710294)
|
研究分担者 |
中村 遼 福岡大学, 工学部, 講師 (00881989)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ICN / NDN / 転送テーブル / 集約 / 配置制御 / 名前付与法 / 経路制御 |
研究実績の概要 |
これまでにICNの中でもNDN (named data networking)を想定し、CDNをNDNのオリジナル提供プラットフォームとして位置づけ、LPM (longest prefix matching)を用いて転送テーブル(FIB: forwarding information base)の集約効果が向上するようコンテンツを再配置することを提案した。しかし先行研究ではコンテンツを配置するノードの位置は考慮しないため、ネットワークリンクの負荷の平均値や最大値が増大する懸念がある。そこでFIBサイズだけでなく,ネットワーク負荷の低減など他の評価尺度の向上をも同時に考慮したコンテンツ配置方式を検討した。 またNDNのFIBサイズを低減する第二のアプローチとして、コンテンツのオリジナルを提供するPublisherの場所に依存した名称をコンテンツ名に接頭語として付与することを検討した。本方式によるInterestの転送にはデータ名の先頭に付与された接頭語を使用するため、FIBのPrefixは「AS名/ルータ名」となり、各ルータのFIBではAS名もしくはルータ名を用いてFIB検索を行う。つまりFIBではAS名とルータ名の二段階で集約が可能となるため、FIBの大幅な低減が期待できる。 さらにNDNのFIBサイズを低減する第三のアプローチとして、Interestパケットの転送経路長の増大量を調整できる制約付き最短経路木ルーティングと最短ホップルーティングを組み合わせる方法を検討した。FIB 集約効果とNDNの通信性能の関係を実験により多面的に調査し、制約付き最短経路木ルーティングと従来のFIB 集約アルゴリズムを適用することにより、FIB の大きさがどの程度削減されるかを評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各課題に対し、以下の取り組みを行ったが、当初の計画以上に進展している。 課題1: コンテンツのオリジナルの配置ノードを少数に限定することで、FIBエントリサイズの更なる低減が期待される。そこで配置ノード数を限定したときの平均FIBサイズ、平均リンク負荷、リンク負荷の変動係数、コンテンツ可用性の4つの評価尺度の重みづけ和を最適化することで、これら4つの評価尺度を同時に考慮したコンテンツ配置ノードの設計法を検討した。そして本成果を2件の国内学会で報告した。 課題2: 提案方式ではデータ名の中にPublisherの位置情報であるAS名とルータ名が含まれる。これによりFIBの集約が容易な反面、Publisherが移動するとデータ名が変化しPublisherにInterestが届かなくなる。そこでデータ名は変えずにInterestをPublisherの移動先のルータに転送する方法を2つ提案した。得られた成果を1件の査読付国際会議で発表した。 課題3: ICN における FIB 集約を実現するための方式として、ネットワーク上の最短経路木に着目したルーティング方式を提案し、提案方式によって FIB エントリ数を大幅に削減できることを実験により明らかにした。これらの成果は、既に2件の国内学会で報告済みである。またユーザによる社会的な振る舞いを考慮した時の ICN を設計するとともに、その有効性を実験的および解析的に明らかにした。これらの成果は、既に4件の国内学会で報告済みである。
|
今後の研究の推進方策 |
課題1: 昨年度までは4つ評価尺度の重みづけ和を最小化する配置ノードを決定するため、全てのノード組の評価値を計算する方法を用いたが、ネットワーク規模の増加に伴い計算時間が急増する問題がある。そこで整数計画問題を効率的に解く近似解法として知られる遺伝的アルゴリズムを用いて、オリジナル配置ノードを選択する方式を検討する。またコンテンツのオリジナルが元々、配置されている場所からの移動コストも考慮して、再配置位置を決定する方式を検討する。そしてこれらの成果の国内会議や国際会議での発表や論文誌への投稿を目指す。
課題2: NDNの運用範囲を各ASや少数の近隣のASで限定することで、NDNにおけるInterestの転送先となるPublisherの位置を少数に集約でき、NDNルータのFIBサイズの大幅な低減が期待される。また世界中のネットワークが同時に全てNDNに置き換わることは難しく、実際にはNDNとIPが混在した環境が予想されるが、NDNの運用範囲を限定することとの整合性も高い。そこでNDNの運用範囲を限定した場合に、エンドホスト間でパケットを転送するための仕組みを検討する。そして得られた成果を国内学会で発表する。
課題3: 経路制御によって FIB の大きさを大幅に削減できることを明らかにしたが、同時に、特定のルータに対する負荷の集中、および、要求パケットが転送される経路長の増大というデメリットを解決する必要がある。そこで、FIB 集約と、上述したデメリットとのトレードオフを考慮した経路制御方式の設計を検討する。さらに、提案方式を実際のネットワーク環境でどのように動作させるか、他の FIB 集約方式 (例えば、FIB エントリの置き換えによる制御) とどのように協調するかなども検討する。これまでに得られた成果と新たに得られた成果とを基に、国際会議での発表や、雑誌論文への掲載を目指す。
|