研究課題/領域番号 |
21H03476
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
亀田 能成 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (70283637)
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研究分担者 |
宍戸 英彦 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (50782067)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | VR体験 / 生体情報計測 / ユーザエクスペリエンス / スポーツ工学 / 主観評価 |
研究実績の概要 |
本研究計画「生体と行動の計測に基づくVR体験の主観評価安定化」において,初年度では交通状況を中心的な実例として取り上げて研究を進めた. まず,「[A] VR中での発生事象(視聴覚刺激)の設計,及び研究フィールドの選定」については,HMD-VRを利用すること,被験者に過度な刺激を与えないこと,などを制約条件とした.様々な議論の結果,歩道上の歩行者が,車道を行き交う車両の速度や事故を見て,安心感をどの程度感じるかをアセスメントするタスクとした. 観測フレームワークの「[B1]生体観測」としては前頭葉脳波に注目した.前頭葉に限定するのはHMD-VR利用時の頭部運動が信号観測に与える影響を抑えるためである.当初想定していた脳波測定機器では所期の結果が得られないことがわかったため,新規に機材を充当した.一方で,「[B2]行動計測」に関しては,我々のこれまでの技術蓄積を援用することで,問題なく導入することができた. 初年度の最大の挑戦は,「[B3]体験レベルの数量化」であった.[B1]のEEGに基づいて,主観としての安心感に接続できるようなEvent related potential(ERP)の定義を試みて一定の結果を挙げたが,その先の研究テーマに取り組むには更なる信頼性向上が必要である.また,[B1]のEEGと[B2]の注視運動傾向との間について,明確な相関を示せる解析には至っていないため,次年度も引き続き取り組んでいく. 交通状況と別の実例として,スポーツ,特にサッカーの空間認知からの試合状況把握における主観評価についても研究を進めている.交通状況におけるイベント以上にERPの検出に繊細さが必要であり,この改善策を模索してきている.これらのいずれも難しい問題であるが,想定の範囲内ではあるので,次年度も研究に引き続き取り組んでいく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に挙げていた「[B3]体験レベルの数量化」は,当初からVR体験時に安定して求めることが難しいと予想されていたので,2年目でも引き続き取り組んでいく.一方で,項目[A][B1][B2]については初年度で目途をつけることができたため,全体としては想定していた進展となった.
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今後の研究の推進方策 |
交通状況を取り上げる研究では,「[B3]体験レベルの数量化」について検討を進める.その基盤は,[B1]での脳波であるが,生体反応として,関連研究で用いてきたた虹彩の大きさ変化や瞬き等も検討する.また,交通状況のシナリオにおいては,主観評価が必ずしもインスタントに変化するとは限らないため,そうしたシナリオへ展開する場合は,やや反応の遅い心拍の導入も考えられよう. 2年目から本格化する「[C]体験レベルに基づく主観評価の信頼度モデル化」に関しては,まずは体験レベルの数値化として,注視運動と注視物体の解析をベースに研究を進める. 交通状況とサッカーでの視覚探索運動を研究題材に取り上げているが,VR空間での刺激とERP検出の関係を明確に定義できるかどうかがこの先の研究の要となるので,場合によっては,「[A]VR中での発生事象(視聴覚刺激)の設計」の再設計も考える.これについては,脳科学・心理学の専門家の知見も参考にする.
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