研究実績の概要 |
本研究では,遺伝子の多様性を表す集団遺伝学モデルに感染者数を表す疫学モデルを組み込み,ウイルスの多様性から感染者数や変異ウイルスの割合の時間変動を推定する手法を開発し,実際に観測される遺伝子データと疫学データを統計的機械学習により解析し,データ同化の手法を用いて感染者数や変異株の割合がどのように変化するかをリアルタイムに予測するとともに,予測の精度を検証することを目的としている。 2021年度は,下記の項目の研究を実施した。 変異株の従来株に対する相対実効再生産数を計算し,従来株から変異株への置き換わりを予測する手法を開発した。開発手法を国内外のデータに適用し,アルファ株,デルタ株,オミクロン株の従来株に対する相対実効再生産数を計算した。デルタ株については,従来株に比べて実効再生産数が1.95倍高いことを明らかにし(Eurosurveillance, 2021),オミクロン株については,デルタ株より実効再生産数が3.2倍高いことを明らかにした (J Med Virol, 2021)。これらの結果に基づき,国内における変異株の割合の推移をリアルタイムに予測し,厚生労働省アドバイザリーボードに計20回報告した。
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