研究課題/領域番号 |
21H03492
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
船水 章大 東京大学, 定量生命科学研究所, 講師 (20724397)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 行動戦略 / マウス / 強化学習 / 習慣行動 / 目的志向行動 |
研究実績の概要 |
ヒトや動物は,ひとつの状況に対して複数の行動戦略を用意し,その戦略を使い分ける.本研究は,戦略切り替えの神経回路基盤を,神経科学と機械学習を統合した学際的手法で解明する.具体的には,マウスの行動実験と行動モデル化,マウスの神経活動計測と操作を用いる.初年度は,戦略切り替えを検証できるマウスの行動課題を提案・実施した.同課題は,頭部を固定したマウスを,トレッドミル上に設置し,様々な周波数の音刺激を提示した.音刺激の周波数に応じて,左右のスパウトを選択し,報酬の水を得た.この行動課題は,音周波数の遷移確率pを操作することで,習慣行動・目的志向行動を分離できる.本研究では,p=0.8に設定した切り替え条件とp=0.2の連続条件を,別々の野生型マウスで実施した.切り替え条件での行動学習は,連続条件での学習に比べて遅かった.この結果は,各条件での行動戦略が異なる可能性を示す.また,制御理論での行動モデル化で,切り替え条件・連続条件でのマウスの選択行動が,それぞれ,習慣行動・目的志向行動に対応することを確かめた. 次に,上述の行動課題を,ChR2を抑制性細胞に発現した遺伝子改変マウスで実施した.レーザー走査型顕微鏡で,同マウスの大脳新皮質背側の任意の領野を光抑制した結果,行動選択に寄与する領野を同定した.一方,行動戦略切り替えに寄与する領野の同定には至らなかった.今後,レーザー強度や,光抑制の時刻を調整する.また,光抑制時の行動を解析し,戦略切り替えに寄与する領野を同定する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスの行動課題の構築に成功し,習慣行動・目的志向行動の切り分けに成功した.一方,光遺伝学での神経活動操作の実験では,選択行動に必須な領野を同定したが,戦略切り替えに必須な領野の同定には至っていない.光刺激の強度や刺激時刻の検討が必要である.
|
今後の研究の推進方策 |
レーザー走査型顕微鏡での光遺伝学実験で,光刺激の強度や刺激時刻の検討を行う.また,遺伝子改変マウスによる光遺伝学実験だけでなく,GtACR2を発現したアデノ随伴ウイルスを用いた光実験系の構築を検討する.さらに,戦略切り替え行動課題時に,神経活動を計測し,脳内の戦略切り替え表現を解明する.
|