研究課題/領域番号 |
21H03512
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
櫻沢 繁 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (40325890)
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研究分担者 |
香取 勇一 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (20557607)
高木 清二 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (80372259)
田中 吉太郎 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (80783977)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | レザバー計算 / BZ反応 / BZゲル / 化学知能ロボット / ソフトマター |
研究実績の概要 |
本研究では、BZ反応によって自律的に膨潤・収縮する機能性高分子(BZゲル)を用いて、「知能」に必要となる「感覚・運動」機能および「判断・学習機能」を実装した化学知能ロボットを実現することを目的としている。 2023年度の実績のうち「感覚・運動」については、BZ ゲルの2次元運動について数理モデリングを行った。 BZ反応の酸化・還元に対応して膨潤・収縮を繰り返すBZゲルの運動を弾性体の蠕動運動と見立て、質点をバネで2次元に複数連結させたマルチブロックモデルを用いて定式化した。上下左右だけでなく斜め方向の質点結合も考慮することで、運動中のロボットの形状を保つことができた。また、運動方程式では過減衰を仮定し、加速度の項は無視した。BZゲルが運動及び反転するためのパラメータの値や範囲を数値的に求めることで、領域に存在しているマロン酸の濃度勾配がBZゲルの反転運動に影響を及ぼしていることを明らかにした。 「判断・学習」については、BZレザバーによって、数字の読み上げ音声から数字を認識し、且つその数字をプロッティングする事を目指した。メンブレンフィルターにBZ反応の反応金属触媒を固定しアクリルアミドゲルでコーティングし、ガラスフィルター上で金属触媒以外の溶液に浸し反応場とした。そこに入力情報に比例した光エネルギーを与え、その出力として酸化型金属触媒の濃度の情報上部からビデオカメラで撮影しPCに取り込んだ。このシステムによって、zeroからnineまでの10種類の音声認識タスクを試行した。発話データをcochleagramに変換し、各周波数帯のパワーを各レーザーのパワーに割り当てBZ反応場へ入力した。学習の結果、誤り率が0.3を下回る条件が現れ、発話データから、手書き文字のおおよその概形が生成可能であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の2021年度における最も重要な課題は、BZ反応を用いたレザバー計算の可能性を探る事であり、数値シミュレーションを用いた調査の結果、理論的に可能であることが示された。2022年度ではBZゲルのスイッチバックのシミュレーションと、BZレザバーの実験系構築及び時系列予測に成功した。また2023年度ではBZゲルの2次元の這行運動のシミュレーションに成功し、また実験系ではBZレザバーにより音声認識に成功し、順調に進んでいることから、2023年度としてはおおむね目標に沿っていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度において、「感覚・運動」のスイッチバックの機能についてはほぼ明らかにされた。一方でそのために開発された2次元運動の数理モデルが、他の形状のゲル、他の環境に置かれたゲル、複数のゲルの相互作用、機械的な刺激に対する反応など、新たな知見を明らかにする可能性が出てきたため、これらを継続してシミュレーションする。同時にシミュレーションで予測された現象を実験系で確認する。実験系では更に、コロイドゲルの挙動を用いて知能的な運動を実現するための準備を行う。「判断・学習」については、BZレザバーについて、BZ反応の反応条件と学習効率との関係をシミュレーションで調べる。実験系では、BZレザバーを運動系とリンクさせる方法について、コロイドゲルを利用しながらコロイドゲルの反応と分散・集合を組み合わせることによって考える。
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