研究課題/領域番号 |
21H03518
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小林 祐一 静岡大学, 工学部, 准教授 (60373304)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 運動学習 / 移動ロボット / 非ホロノミック拘束 / 変数変換 |
研究実績の概要 |
ロボットの運動学習法は,対象とする動作毎に異なる方法や設定が適用されることが一般的であり,異なる動作に共通して利用可能な方法は存在しない.また,運動学習で主流となっている最適制御・強化学習の枠組みは,評価関数の最大化という形式をとっており,本質的に多くの試行錯誤を要するという課題を持っている.本研究では,フィードバック制御という比較的単純でありながら普遍性のある制御構造をベースにして,運動学習問題を「制御しやすくなるような変数変換を獲得する問題」と捉えることで,異なる運動に共通して適用可能な学習原理を構築する方法を提案・開発する.これまでの研究成果である「可制御性にもとづく変数探索による制御則自動生成」の考え方を一歩前進させて,「可制御・可到達になるような変数への写像(変換)」を獲得し,制御則を自動生成する方法を構築する. 「制御しやすい変数変換」の獲得課題として,非ホロノミック拘束を受ける対向2輪型の移動ロボットを用いた.この課題は,状態変数がロボットの位置・姿勢からなる3次元に対して,制御入力は両輪の回転速度からなる2次元となり,劣駆動系とも呼ばれる.状態および制御入力に適切な非線形変換を施すことで線形のフィードバック制御が可能になるという性質を活かした変数変換の推定方法を多次元格子による分散型計算法として開発し,2輪型移動ロボットの目標位置到達制御に適用した.ロボットの位置・姿勢の観測情報として利用し,位置・姿勢情報からの非線形変換を未知とした条件のもとで,時間軸状態制御形に変換を行えるという知識を用いることで変数変換を表現する格子位置を決定する.比較的小さいサイズの格子に対して,提案する変数変換によるフィードバック制御が可能になることが確認された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非ホロノミック拘束を受ける非線形システムに対して,制御の方法論を用いた変数変換の推定というアプローチでの運動学習が可能であることが確認された.提案方法の核となる部分は,非線形制御の方法論を格子状の変数変換法のもとで展開し,エネルギー最小化問題という形で実装することである.この点について,エネルギー最小化問題を勾配法で解くことで提案するアプローチが実現可能であることが確認できた. 2輪型の移動ロボットの制御問題をシミュレーション上で実装・検証し,強化学習などの運動学習法と比較して非常に少ないサンプル数で目標位置・姿勢への制御が可能であることが示された点で,本研究計画の重要な段階を達成した.ただしその実装の過程で,格子サイズを増大させた場合の変数変換推定方法にはまだ修正・改善の余地がある.これらの点を含めて,今後の研究により実装・拡張と検証を進める.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度に開発した非ホロノミックシステム(劣駆動系)の運動学習法については,シミュレーション上での改善と開発を継続する.現在実装されている変数変換推定法の内部で行われている推定過程をより詳細に検討し,より広いコンフィギュレーション空間において同様の変換推定を行う際に生じる問題の検証を進める.それとともに,実機の移動ロボットでの実装と検証を進める.カメラと移動機構からなるロボットシステムにおいて,センサで計測するロボットの位置・姿勢に対応する3次元情報(ロボットのコンフィギュレーションと同型写像)を得て,その情報のみを用いた目標位置への制御を行うことを目標とする. また一方で,冗長自由度をもつマニピュレータの制御問題に,提案するコンセプトと同様の変数変換推定を適用することを目指した実装を行う.ロボットマニピュレータにより手先位置を計測するシステムを構築し,ロボットの手先位置を制御する課題を設定してその準備を行う.
|