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2021 年度 実績報告書

自然環境下での奥行き錯視の数理モデル構築と事故防止・知育教育への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21H03530
配分区分補助金
研究機関明治大学

研究代表者

杉原 厚吉  明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 研究推進員 (40144117)

研究分担者 大谷 智子  明治大学, 総合数理学部, 助教 (40422406)
宮下 芳明  明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (40447694)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード立体錯視 / 視覚の数理モデル / 錯視遊具 / VR / 遊び / 奥行き誇張画像 / 運動錯視
研究実績の概要

本研究の目的は、自然環境下で起こる錯視について、(1)その仕組みを説明する数理モデルの構築、(2)数理モデルを応用した安全環境整備、(3)錯視体験遊具の試作と安全教育への応用を推進することである。
研究代表者杉原は、数理モデルの構築とその応用を主に受け持ち、特に画像から奥行きを知覚する場合に、横たわったものが立ち上がって見えたり(起き上がり錯視)、左右が反転して見えたり(左右反転錯視)、凹凸が逆転したり(高さ反転錯視)する視覚現象を収集し、それらが画像を見る姿勢が要因となって起こることを突き止めた。安全環境づくりでは、奥行きが誇張された画像から錯視の原因を取り除き、撮影した場所に立って見まわしたとき見えるはずのシーンのありのままの姿を復元する画像変換法を開発し特許も出願した。錯視体験遊具としては、乗って歩ける無限ループ階段の設計法を開発し、その実装例を国内のテーマパークでのエッシャー展に付随する体験遊具として設置して、参加者が錯視を体験できることを確認できた。
研究分担者宮下は、錯視を体験するVRやコンテンツの開発を主に受け持ち、特に輝度変化による運動錯視を用いたアニメーション作成ツールに関する研究を行った。これは、入力画像に対して錯視を発生させる領域および動かしたい方向を選択することで、一定方向に無限に運動するように知覚される錯視映像を生成できるソフトウェアである。
研究分担者大谷は、身近にある木や紙素材を使って創作できる遊具の開発を主に受け持ち、科学的知見に基づいた、体験しながら学べるワークショッププログラムを開発し、実施した。また、ガラスや鏡でできた立体物の存在が消失してしまう錯覚で奥行きが分からなくなる現象に着目し、鏡面の存在が知覚しづらくなる条件を整理した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

第1の研究目的である錯視を説明する視覚の数理モデル構築については、対象を鏡に映したときに期待に反した知覚が生じる錯視に注目し、対象と鏡を見る姿勢および重力方向の影響を受けることを明らかにできた。この成果は、従来の多義図形の研究に新しい側面からのアプローチの可能性を示したものである。
第2の研究目的である安全環境整備では、奥行きが誇張された画像から誇張の生じる錯視要因を取り除き、対象の正しい奥行きが知覚できるよう画像を変換する技術を構築した。これにより、インターネットショッピングなどにおける消費者の商品形状誤認を軽減する方法を提供できるようになった。
第3の研究目的である錯視遊具については、輝度変化による運動錯視を生成するアニメーションツールの開発、貴や紙素材を使った錯視遊具の開発、乗って歩ける無限ループ階段の開発ができた。これにより、錯視遊具の可能性を大きく広げることができた。
以上のように、3つの研究目的のすべてにおいて、計画通りの成果を上げることができた。

今後の研究の推進方策

予定通り、視覚の数理モデルの改良、その安全環境整備への応用、錯視遊具の開発と応用の3本柱で研究を継続する。
研究代表者の杉原は、視覚の数理モデルの改良とその応用を主に受け持つ。歪のある画像からありのままを復元する方法を、360度カメラ画像にも適用できるように改良する。道路の安全への応用では、ドライバーへ向けてのメッセージが立ち上がって見えるように路面に描く方法を開発する。歩ける無限ループ階段は手すりをつけて安全を確保する対策を施して、もっと大きいもの開発する。雪の大型滑り台は、今までの左右対称形ではなくて非対称な形での実現を目指す。鏡に映すと姿が変わる変身立体も、等身大の人の姿などの大型のものを設計する。これらの試作を通して収集した視覚効果データをフィードバックすることにより、視覚の数理モデルを改良していく。
研究分担者宮下は、まず、輝度変化による運動錯視が、Brain-Computer Interface (SSVEPベースBCI)のユーザインタフェースに応用可能であるかを検証する。また、VR酔を軽減する目的で、オプティカルフローに応じた非円形視野制限を行う手法について検証する。
研究分担者大谷は、鏡面が消失する錯覚の生起要因について、心理物理学的な検証を行う。これまでの知見と合わせ、発達段階にあう安全視覚教育の指針づくりを行う。2023年度は、中学生・高校生を対象とし、錯覚が起きる法則を体験しながら学べるワークショッププログラムの開発と実証実験を行う。

  • 研究成果

    (39件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 8件、 招待講演 7件) 図書 (2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] 歩けることを目指した無限ループ階段の設計法2022

    • 著者名/発表者名
      杉原厚吉
    • 雑誌名

      図学研究

      巻: 56 ページ: 13~23

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Rising object illusion2022

    • 著者名/発表者名
      Sugihara Kokichi
    • 雑誌名

      Journal of Mathematics and the Arts

      巻: 16 ページ: 232~243

    • DOI

      10.1080/17513472.2022.2045047

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 3D realization of Penrose polygons using non-rectangularity trick2021

    • 著者名/発表者名
      Kokichi Sugihara
    • 雑誌名

      Journal of the Society for Art and Science

      巻: 20 ページ: 269~275

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] True Views from Depth-Exaggerated Images2021

    • 著者名/発表者名
      Sugihara Kokichi
    • 雑誌名

      Proceedings of the International Display Workshops

      巻: - ページ: 1038~1038

    • DOI

      10.36463/idw.2021.1038

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 視線を用いた 1 次元ポインティングにおける 1 次サッカードエラー率のモデル化2021

    • 著者名/発表者名
      島田雄輝,薄羽大樹,宮下芳明
    • 雑誌名

      情報処理学会論文誌

      巻: 63 ページ: 413-423

    • 査読あり
  • [学会発表] 高さ反転錯視・起き上がり錯視・宙返り錯視~ 共通の光学過程から生まれる3種類の知覚2022

    • 著者名/発表者名
      杉原厚吉
    • 学会等名
      第16回錯覚ワークショップ
  • [学会発表] 奥行き誇張画像から真の姿を取り出す「ありのままディスプレイ」の提案2022

    • 著者名/発表者名
      杉原厚吉
    • 学会等名
      映像情報メディア学会情報ディスプレイ研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 減塩生活者を対象とした電気味覚による塩味増強効果の調査2022

    • 著者名/発表者名
      鍜治慶亘,安蔵健司,佐藤愛,宮下芳明
    • 学会等名
      インタラクション2022
  • [学会発表] 操作の前提条件を自然な形で確認するインタフェース2022

    • 著者名/発表者名
      彭雪儿,宮下芳明
    • 学会等名
      インタラクション2022
  • [学会発表] SSVEPベースのBCIにおけるフリッカ刺激の数と大きさの影響2022

    • 著者名/発表者名
      振原知希,宮下芳明
    • 学会等名
      インタラクション2022
  • [学会発表] 画面角と画面端のターゲット配置が操作時間に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      13.大塲洋介, 薄羽大樹, 山中祥太, 宮下芳明
    • 学会等名
      ヒューマンコンピュータインタラクション2022
  • [学会発表] 味覚ディスプレイの技術開発2022

    • 著者名/発表者名
      宮下芳明
    • 学会等名
      公益社団法人 東京屋外広告協会
    • 招待講演
  • [学会発表] 味覚メディアが拓く未来2022

    • 著者名/発表者名
      宮下芳明
    • 学会等名
      メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会(MVE)電子情報通信学会
    • 招待講演
  • [学会発表] ガラス建築に対する錯視の危険性の検討2022

    • 著者名/発表者名
      大谷智子・丸谷和史・天内大樹
    • 学会等名
      第16回錯覚ワークショップ
  • [学会発表] Rising object illusion2021

    • 著者名/発表者名
      Kokichi Sugihara
    • 学会等名
      European Conference on Visual Perception
    • 国際学会
  • [学会発表] Triply ambiguous objects2021

    • 著者名/発表者名
      Sugihara Kokichi
    • 学会等名
      Asian Forum on Graphic Science
    • 国際学会
  • [学会発表] Family tree of impossible objects created by optical illusions2021

    • 著者名/発表者名
      Sugihara Kokichi
    • 学会等名
      23rd Thailand-Japan Conference on Discrete and Computational Geometry, Graphs, and Games
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 写真から真の姿を知る「ありのままディスプレイ」2021

    • 著者名/発表者名
      杉原厚吉
    • 学会等名
      日本応用数理学会年会
  • [学会発表] 無限ループ階段の描画法と歩ける立体の設計法2021

    • 著者名/発表者名
      杉原厚吉
    • 学会等名
      日本図学会大会
  • [学会発表] TTTV (Taste the TV): Taste Presentation Display for “Licking the Screen” using a Rolling Transparent Sheet and a Mixture of Liquid Sprays2021

    • 著者名/発表者名
      1.Homei Miyashita
    • 学会等名
      34th Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology
    • 国際学会
  • [学会発表] Modeling Movement Times and Success Rates for Acquisition of One-Dimensional Targets with Uncertain Touchable Sizes2021

    • 著者名/発表者名
      2.Hiroki Usuba, Shota Yamanaka, and Homei Miyashita
    • 学会等名
      ACM Hum.-Comput. Interact.
    • 国際学会
  • [学会発表] VRレースゲームでの動的なトンネリングによる速度感と酔いの調査2021

    • 著者名/発表者名
      萱場大貴,宮下芳明
    • 学会等名
      エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2021
  • [学会発表] 輝度変化による運動錯視を用いたアニメーション作成ツール2021

    • 著者名/発表者名
      中野内涼也,宮下芳明
    • 学会等名
      エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2021
  • [学会発表] 電気味覚のための刺激波形デザインシステム2021

    • 著者名/発表者名
      鍜治慶亘,宮下芳明.TasteSynth
    • 学会等名
      エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2021
  • [学会発表] 電子コンパスのずれに気づける音声ナビゲーションシステム2021

    • 著者名/発表者名
      彭雪儿,宮下芳明
    • 学会等名
      エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2021
  • [学会発表] リアルタイムで塩味を伝える通信システム2021

    • 著者名/発表者名
      小林未侑,宮下芳明.TeleSalty
    • 学会等名
      エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2021
  • [学会発表] 文字通りの感情で伝わるボイスチャットシステム2021

    • 著者名/発表者名
      宮岡拓也,青木秀憲,宮下芳明
    • 学会等名
      第29回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ
  • [学会発表] 4拍子楽曲を圧縮して3拍子化するための探索インタフェース2021

    • 著者名/発表者名
      阿部悠希, 宮下芳明. Waltzizer
    • 学会等名
      第29回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ
  • [学会発表] スマートフォンに息を吹きかけるポインティングインタフェース2021

    • 著者名/発表者名
      宮下芳明, 青木秀憲. Ha & Fu
    • 学会等名
      第29回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ
  • [学会発表] 液体噴霧混合式の味ディスプレイの試作2021

    • 著者名/発表者名
      宮下芳明
    • 学会等名
      第29回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ
  • [学会発表] 味覚メディアの未来について2021

    • 著者名/発表者名
      宮下芳明
    • 学会等名
      UNESCO Netexplo Forum 2021:Disrupting Food
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Integrating Taste Technology with Audiovisual Media2021

    • 著者名/発表者名
      Homei Miyashita
    • 学会等名
      2021 IEEE International Electron Devices Meeting
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] オーガナイズドセッションB「コミュニティ」「食」,「VR×食」2021

    • 著者名/発表者名
      宮下芳明
    • 学会等名
      バーチャル学会2021
    • 招待講演
  • [学会発表] The photographed 3d object attached with geometric textures is perceived larger than its actual size2021

    • 著者名/発表者名
      T.Ohtani, and K.Maruya
    • 学会等名
      13th Asian Forum On Graphic Science
    • 国際学会
  • [学会発表] 小中学生を対象とした錯視を学ぶ体験型授業プログラムの提案2021

    • 著者名/発表者名
      大谷智子・丸谷和史
    • 学会等名
      日本図学会2021年度大会
  • [図書] 鏡のトリック立体キットBOOK2021

    • 著者名/発表者名
      杉原 厚吉
    • 総ページ数
      16
    • 出版者
      永岡書店
    • ISBN
      4522802587
  • [図書] 見て、知って、つくって! 錯視で遊ぼう2021

    • 著者名/発表者名
      杉原 厚吉
    • 総ページ数
      80
    • 出版者
      誠文堂新光社
    • ISBN
      4416621450
  • [備考] Kokichi Sugihara's Home Page

    • URL

      http://www.isc.meiji.ac.jp/~kokichis/

  • [産業財産権] 情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム2021

    • 発明者名
      杉原厚吉
    • 権利者名
      明治大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2021-134087

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公開日: 2023-12-25  

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