研究課題/領域番号 |
21H03532
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高島 一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 上級主任研究員 (90357351)
|
研究分担者 |
冨永 貴志 徳島文理大学, 神経科学研究所, 教授 (20344046)
梶原 利一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60356772)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 心拍 / 脳血流 / 感覚応答 / 光計測 |
研究実績の概要 |
ヒト脳波の計測では、手指に電気刺激を与える実験において、被験者心拍の収縮期に与えた場合より心拍拡張期に与えた方が、体性感覚誘発電位が大きくなった、と報告されている。しかし、この心拍周期と外部刺激のタイミングによって生じる感覚野応答の変化については、未だその詳細はよく分かっていない。本年度は、麻酔下 in vivo ラットの心拍動を計測しながら、心拍の収縮期および拡張期のタイミングで前肢に電気刺激を与え、脳の体性感覚野皮質に誘発される応答を局所フィールド電位(LFP)計測法により解析した。3Dプリンターを用いて、手の甲と掌を挟む形状の前肢電気刺激用ホルダーを作製し、刺激条件の再現性を高める工夫を行った。感覚刺激誘発電位LFP波形の正負ピーク値を求め、peak-to-peak振幅およびpeak-to-peak時間差を解析した。その結果、振幅および時間差の中央値においては、収縮期および拡張期の応答に有意な差は認められなかった。しかしながら、感覚応答のトライアル毎のバラツキを解析すると、収縮期における応答の揺らぎは収縮期の揺らぎより大きいことが明らかになった。収縮期の感覚応答のバラツキは、標準偏差比(収縮期/拡張期)で、140%(peak-to-peak振幅)および130%(peak-to-peak時間差)となった。次に、脳血管拡張に関わるマイネルト核を薬理学的に破壊したモデル動物を作製し、同様の実験を行った。その結果、このモデル動物は触覚過敏の症状を呈するとともに、上記のような心拍周期に依存した応答変化の現象は確認されなかった。以上のことから、マイネルト核が関与する脳血管系への修飾作用が脳神経活動に関与しているという1つの可能性が考えられた。また、膜電位イメージング実験を進める中で、皮質の感覚応答表現に関して新しい発見があり論文発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心拍の収縮期/拡張期に感覚刺激を与えて神経応答を解析する実験は順調に進み、新しい知見が得られている。一方で、感覚応答の空間広がりを評価する膜電位イメージングでは、新しいプローブ色素での測定系の調整が未だ最適化できていない。現状、感覚応答の変化を評価できる十分なイメージングデータが得られていないことから、進捗はやや遅れている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度、心拍周期に依存して変動する皮質感覚応答の特徴について、実験数を重ねて詳細に検討を行う。また、収縮期/拡張期という心拍周期の2分割からさらに進め、心拍の収縮/拡張の各期間内であっても感覚入力のわずかなタイミング位相の違いにより、神経応答に変化が生じるかどうかを明らかにしてゆく。特に膜電位イメージング実験を加速し、神経応答の時空間パターン変化についての解析を進める。
|