研究課題/領域番号 |
21H03547
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
白井 剛 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (00262890)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 生命分子計算 / 生体超分子構造 / データサイエンス医療 / グラフ理論 |
研究実績の概要 |
2021年度計画に従い、疾患-治療薬経路グラフデータ高次化のために、Mutation@A Glance(http://mutation.nagahama-i-bio.ac.jp/)およびDTX(http://harrier.nagahama-i-bio.ac.jp/dtx/)を用いた変異部位のマッピング情報とタンパク質超分子の立体構造モデルの構築を進めた。既知立体構造データから、医薬品とヒトタンパク質の複合体モデル構築が可能なケースを探索した結果、2027件の複合体(ユニークな複合体として566件)が該当することが示された。これらのモデリングを進める過程で抗体医薬品を含む高中分子の情報3226件がDTXに未収載であったことが判明した。これらの医薬品は本研究のモデル構築に極めて重要であるので、追加のモデリングとアノテーションを優先的に実施した。また次年度計画の予備的研究として現状の疾患-治療薬経路グラフデータの機械学習(勾配ブースティング決定木、GBDT)によるドラッグ有効性の推定をおこなった。ある疾患とその疾患に有効なドラッグ間のパス(therapeutic trueケース)と、その疾患の有効性が知られていないドラッグのパス(therapeutic falseケース)で学習し交差検定した結果、精度0.88で有効ドラッグを識別することが可能であった。またドラッグリポジショニングの成功例(reposition trueケース)と失敗例(reposition falseケース)は精度0.88で、副作用報告の多いドラッグ(high-adverseケース)と少ないドラッグ(low-adverseケース)は精度0.79で識別可能であった。この結果から、DTXが効率的なターゲット探索に利用可能であると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度実績に述べた様に、概ね計画に沿って進行していると判断した。当初計画からの変更としては、抗体医薬品を含む高中分子の情報3226件のDTXへの追加登録とモデリングがあったが、これらはデータの補強に大きく寄与することから、大きな障害にはならないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究により、抗体医薬品などの情報を疾患-治療薬経路グラフデータ取り込むことができた。また、現在のグラフをもとに勾配ブースト決定木により、疾患に有効なドラッグと無効なドラッグを約90%の精度で判別することに成功した。2022年度は、これらの結果を受けて、疾患関連ヒトタンパク質およびドラッグターゲットタンパク質の立体構造モデリングと、モデルの疾患-治療薬経路グラフデータへの反映を進め、疾患-治療薬パスの有効性の予測精度が向上するか検討する。具体的には、モデルから推定されるドメイン間の独立性および共同性の情報により、現在は1タンパク質1ノードで定義されている疾患-治療薬経路グラフデータのノードを単純に分割(例えばノードPROT --> PROT1, PROT2, PROT3など)し、疾患関連性およびドラッグターゲットのエッジを分割ノードにアサインすることで、グラフの精密化を図り、これによって有効ドラッグの識別能が向上するか検討する。また改善されたを疾患-治療薬経路グラフデータを利用し、キナーゼ(癌など)、NFS(癲癇)、CHD8(ADS)などの現在他大学との共同研究が進行中の疾患関連ヒトタンパク質に成果を適用し、有効性の検証を計画する。
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