研究課題/領域番号 |
21H03565
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀口 知也 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (00294257)
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研究分担者 |
平嶋 宗 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (10238355)
東本 崇仁 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (10508435)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 知的学習支援システム / 例からの学習 / 知識の一般化 / 類推 / 構造写像エンジン / 構造一般化エンジン |
研究実績の概要 |
対象領域の深い理解を達成する上で有効とされる「例からの学習」では,解法を概念・原理と結びつける問題スキーマ,例題間の共通点・相違点を一般化する汎化スキーマを獲得することが重要である.先行研究では,これらを支援するために「説明生成器」及び「問題系列生成器」を開発し,それらが問題スキーマの獲得に貢献することを実験的に確認したが,汎化スキーマの獲得には不十分との知見も得られた.これは,汎化スキーマ獲得の中心となる類推及び知識の一般化が大きな負荷を伴う認知過程であることによる.そこで本研究では,学習者の認知負荷の軽減を指向して,(1)問題構造を可視化・操作可能化し,(2)問題比較と知識の一般化をより直接的に支援する「類推マップ」を開発し,その有用性を検証する.これによって,「例からの学習」を十全な汎化スキーマの獲得に結びつけるための支援方法を確立することを目的としている. 2021年度は,問題スキーマ及び汎化スキーマの獲得を支援する機能の中核となる「類推マップ」を設計し,プロトタイプの実装を行った.このとき,知識の一般化にかかる「類推」の認知負荷を軽減するため,まず,(1)問題の構造や構成要素間の照合関係を可視化・操作可能化する支援機能を設計・実装した.その際,問題の構造を明示的に記述するため,研究代表者らが先行研究で開発した「制約の意味論」に基づくモデル記述ツールを用いた.次に,(2)学習者が作成した問題間の照合を診断して助言を生成する支援機能を設計・実装した.その際,類推における構成要素間の照合関係の「良さ」を評価するため,研究協力者のForbus教授らが開発した「構造写像エンジン(SME)」を用いた. なお,コロナ渦の影響により,主システムの実装に必要な計算機の納入が遅れたため,2022年度4月~6月に主システム開発と動作試験を行うこととした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,「例からの学習」における問題スキーマ及び汎化スキーマの獲得を支援する機能の中核となる「類推マップ」を設計し,プロトタイプの実装を行った.スキーマの獲得は主に複数の問題の比較を通して行われるが,このとき学習済みの問題(ベース)と今解くべき問題(ターゲット)との共通点・相違点を同定して新しい解法の生成や知識の一般化を行う「類推」が中心的役割を果たす.類推は多くの資源を必要とする負荷の大きい認知過程であるため,まず,(1)ベースとターゲットの構造や構成要素間の照合関係を可視化・操作可能化する支援機能を設計・実装した.その際,問題の構造を明示的に記述する方法が必要となるが,研究代表者らが先行研究で開発した「制約の意味論(物理系のモデル 導出過程に関わる概念体系)」に基づくモデル記述ツールを用いた.次に,(2)学習者が作成したベース-ターゲット間の照合を診断して助言を生成する支援機能を設計・実装した.その際,類推における構成要素間の照合関係の「良さ」を評価する必要があるが,研究協力者であるForbus教授,Gentner教授(Northwestern大)らが開発した「構造写像エンジン(SME)」を用いた. なお,コロナ渦の影響により,主システムの実装に必要な計算機の納入が遅れたため,当初予定していたプロトタイプに基づく主システムの実装及び動作試験については,2022年度4月~6月に実施することとした.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,まず主システムの実装及び動作試験を6月までに完了した後,当初計画に基づき,「モデル照合」支援が学習者の知識構築にどのように貢献するかを,大学生・大学院生を対象とした学習実験によって検証する.実験用の教材作成を8月末までに完了した後,9月~10月に実験を実施し,それ以降に結果の分析を行う.教材作成及び実験実施は,研究代表者と分担者が適宜研究協力者の助言を受けながら遂行し,結果の分析は研究班全員で行う.実験においては,類推マップによる支援の有無や学習者の特性を考慮して幾つかの学習条件を設定する.分析においては,事前・事後・遅延テスト及び問題分類テストの学習ゲインに加えて,システムログから学習者によるシステム操作回数や内容(マッピングや一般化の質)を抽出した結果を用いることで多角的な評価を行う.分析を通して,スキーマ獲得における学習者の困難を明確化し,次年度に予定している「知識の一般化の支援機能」の詳細設計のための基盤構築を目指す.
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