研究課題/領域番号 |
21H03571
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
岩崎 慶 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90379610)
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研究分担者 |
土橋 宜典 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (00295841)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | レンダリング / BRDF / ノンパラメトリック表現 |
研究実績の概要 |
本研究では,現実世界の材質の反射率を計測した,計測スペクトラルBRDFの表現力を高め,実用性を向上するための解析手法と編集手法を提案する.現実世界の様々な材質の反射率を計測した計測BRDFとして,2000年に公開されたMERL BRDFがコンピュータグラフィックス分野だけでなくコンピュータビジョン分野において広く用いられてきた.MERL BRDFは,様々なパラメトリックモデルのベンチマークとしても用いられてきたが,等方性BRDFに限られている,RGBの3波長しか計測していない,欠損データがある,といった課題もある.これらの問題を解決するために,2018年にDupuyとJakobらによって,波長を考慮して計測された,計測スペクトラルBRDFが公開されている.計測スペクトラルBRDFは,等方性だけでなく異方性材質の反射率も計測しており,また,RGBの3成分だけでなく,358nmから1002nmの広範囲な波長領域において,195成分の反射率を計測しているため,計測した材質の質感を忠実に再現することが期待される. 計測スペクトラルBRDFは,方向成分について3次元(等方性)から4次元(異方性)へと拡張し,また波長についても60倍以上の分解能で計測しているため,データ量が大きいという問題がある.2023年度では,計測スペクトラルBRDFを圧縮し編集できるように,計測スペクトラルBRDFのパラメトリック表現,およびノンパラメトリック表現に関する研究を行なった.計測スペクトラルBRDFのパラメトリック表現としては,等方性BRDFを対象として,two-scale microfacetreflectance modelへのフィッティングを試みた.ノンパラメトリック表現としては,異方性BRDFを対象として,方向成分だけでなく,波長成分のコヒーレンスに着目して,圧縮する手法の開発を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,計測スペクトラルBRDFのパラメトリック表現とノンパラメトリック表現の研究を行なった. 計測スペクトラルBRDFのパラメトリック表現では,等方性BRDFを対象とし,two-scale microfacet reflectance modelへフィッティングする研究を行なった.two-scale microfacet reflectance modelはパラメータ数が多いため,全てのパラメータを同時に求めると,非線形最適化に時間を要し,また安定かつ頑健にパラメータを求めることが難しいことが基礎実験により判明した.そこで,波長に依存するパラメータと,波長非依存のパラメータに分け,別々に求める2段階手法を試みている.異方性計測スペクトラルBRDFのノンパラメトリック表現の研究では,法線分布関数と幾何減衰項について可視化した結果,波長次元に関して非常に類似していることが判明した.そこで,主成分分析により波長に関して圧縮する手法を開発した.2022年度に行なった,計測スペクトラルBRDFの意味的解析による成分分離手法と,等方性計測スペクトラルBRDFのパラメトリック表現手法について実験を行い,研究成果をまとめ,国際会議に論文を投稿した.CGによる質感表現に関して,国際会議で招待講演を行なった.
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今後の研究の推進方策 |
異方性計測スペクトラルBRDFをパラメトリック表現する研究を行う.2023年度まで,等方性計測スペクトラルBRDFについてパラメトリック表現する研究を行なってきたが,パラメータ数が多く,最適化に時間を要することが判明している.そのため,方向に関して3次元関数である等方性BRDFよりもさらに高次元の異方性BRDF(4次元)について,最小二乗法といった最適化手法でパラメータを求めることは,メモリ量および計算量の観点から難しいと考えられる.そこで,2024年度では,確率的最急降下法(Stochastic Gradient Descent)を用いて,実用的な速度かつメモリ量でパラメータを求める手法の研究を行う.
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