本研究は、様々な映画を視聴している時の脳波データ、自律神経データ及び、映画に対するアンケートデータなどの統合的なデータを取得することを目指した研究である。共感には、意識レベルに上る認知的共感と身体反応が無意識的に生じる情動的共感の二つがあることが知られているが、これまでの脳波を用いた共感に関する研究は 認知的共感の側面しか捉えることが出来ていなかった。本研究では、自律神経データも取得し情動的共感について捉えるとともに、自律神経変化により引き起こされる身体的変化が内受容感覚を通して認知的共感に及ぼす影響も調べることで、共感を生み出す様々な要素を総合的に捉えることが出来ることが特徴である。 前年度においては、のべ、356名のデータの取得を行ったが、2022年度の実験においては、22名の実験参加者に5本の映画を見てもらっているときのデータとして、のべ、110名のデータの取得に成功した。これらの取得したデータの解析を進めている。また、脳波の指標として、実験参加者間の同期やHeartbeat evoked potentialに注目していたがこれらとともに、視線を移動させた後に固視したときに現れるEye fixation related potential(EFRP)も映画を見ているときに観察することが可能であることから、EFRPの解析も開始した。ただし、EFRPに関しては、固視した瞬間を同定する必要があるが、この同定は基本的に人が目で見て決める場合が多い。しかし、我々のデータは非常に膨大であることから、自動的に固視した瞬間を同定するモデルが必要であり、このモデルの開発も行った。
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