研究課題/領域番号 |
21H03577
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
河本 和明 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (10353450)
|
研究分担者 |
中山 智喜 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (40377784)
張 代洲 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (90322726)
鈴木 健太郎 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (00396946)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 霧 / エアロゾル / 吸湿性 / 光吸収性 |
研究実績の概要 |
エアロゾル粒子には硫酸塩や硝酸塩、ダスト、ブラックカーボン(以後BC)、有機物、海塩など様々なタイプがあるが、その一部は雲粒の核になり、間接的に気候に影響を及ぼしている。エアロゾル粒子の量や物理化学的な特性の違いにより、雲凝結核能が変化することで、生成する雲の特性が変化することが考えられるなど、エアロゾル粒子が雲粒生成に及ぼす影響は複雑で十分解明されていない。そこで本研究では、雲仙岳の山体を利用し、エアロゾル粒子と雲粒(正確には霧粒)の連続観測を実施するとともに、捕集したエアロゾル粒子の電子顕微鏡分析を行い、エアロゾルの特性が雲粒生成に及ぼす影響や、雲の有無がエアロゾルに及ぼす影響について調べる。また、得られた結果を利用することで、衛星観測による霧水総量や霧有効粒径の導出精度の向上を目指す。さらに、地上観測および衛星観測データを数理モデルに入力することで、雲粒の特性を決定づける各要因の寄与度を推定する。以上により、エアロゾル粒子の特性が雲粒生成に及ぼす影響の解明を目指している。 2023年度には、長崎県の雲仙岳にある山頂駅(標高1300m)および仁田峠にある山麓駅(標高1080m)の2地点において、2022年度に小型計測器を用いて計測した雲粒子データを解析し、粒子数密度や粒子サイズの特徴や、観測地点による違いを明らかにすることができた。また、雲粒の特性データに加えて、新たにエアロゾル粒子の粒径分布の観測データを取得することができた。また特徴的な大気状況を捉えた実地でのサンプリングを実施でき、その解析を行った。さらに人工衛星データの解析と数値モデリングを定常的に進めることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、2022年度に実施した雲仙岳の山頂付近の2つの異なる高度での雲粒子の数密度および粒径、形状に関する指標の観測結果を解析し、雲仙岳においては、8月は、12月に比べて雲粒子の発生頻度が高く、雲粒子サイズが大きい傾向がみられた。一方、12月には、8月に比べて低頻度ながら、より小粒径で高数密度の雲粒子が発生することがわかった。また、PM2.5および黒色炭素(BC)の重量濃度の観測を継続するとともに、エアロゾル粒子の粒径分布の観測を新たに行った。また実地でのサンプリングを通して、電子顕微鏡の分析で得られた個別粒子の元素組成を用いた解析の結果、大気汚染が弱い時に、浮遊粒子の主な組成は海塩であり(海岸沿いで83%、山頂で97%)、 そのほとんどは混合粒子、つまり他の成分と混合していることがわかった。また人工衛星データの解析から、雲粒子の粒径の違いによって、氷晶を含む雲の割合の感度に違いがあることがわかった。さらに数値モデリングの結果を用いて、2022年度に引き続き、雲の粒径分布関数を陽に予報するビン法雲微物理モデルから、エアロゾルの雲凝結核能を特徴づける吸湿性パラメータが雲の微物理・光学特性に与える影響を調べた。その結果、吸湿性パラメータの大小は雲凝結核数密度の多寡と等価な影響を雲粒有効半径と雲光学的厚さに与えることが示された。 以上のように、ほぼ当初の予定通り進めることができており、本研究は、現時点で概ね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度前半は、雲粒子特性やエアロゾル粒子の粒径分布などの連続観測を継続して実施する。2024年度後半には、これまでに取得した観測データを解析し、エアロゾル粒子が雲粒子の生成過程や特性に及ぼす影響に関する知見を得る。人工衛星データの解析も並行して実施する。またサンプル採集については、黄砂などのイベントに注目して雲仙岳の山頂と山麓で行う。海塩粒子も解析するため海水も採取する。数値モデリングについては、これまでの観測結果を数値モデルに入力し、現実的な大気場での霧粒子の成長・衰退過程の計算から、各過程の寄与度を定量化する。これらを通して最終年度である2024年度に全ての研究結果をまとめる。
|