研究課題/領域番号 |
21H03587
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
溝端 浩平 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (80586058)
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研究分担者 |
草原 和弥 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 研究員 (20707020)
平野 大輔 国立極地研究所, 南極観測センター, 助教 (30790977)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トッテン棚氷 / 定在海洋渦 / 周極深層水 / 棚氷底面融解 / 熱輸送量 |
研究実績の概要 |
複数の海面高度計(CryoSat-2、Sentinel-3A、Sentinel-3B、Jasonシリーズ)を用いて、南極沿岸域を含む南大洋全域の海面力学高度データセットを構築した。海面力学高度とヨーロッパ中期予報 センターの再解析データである海面気圧を用いて、特異値分解解析を行うことで風応力場と海洋循環の関連について解析を行った。その結果、ウェッデル循環やロス循環の時間変動は南半球環状 モードに強く依存しているが、本研究の対象である東南極白瀬氷河・トッテン棚氷の沖に存在する定在海洋渦の循環強度変動は風応力には依存しないことが明らかになった。加えて、本研究の海面力学高度データを応用することで、定在海洋渦による熱輸送量を明らかにした。また、沿岸域までの海面力学高度分布を算出可能にし、新たにトッテン氷河付近、ビンセネス湾、プリッツ湾において時計回り循環が存在することを明らかにした。このトッテン氷河近傍では、今年度はJARE63の航海にて、トッテン氷河近傍海域の沖合大陸斜面から氷河前面にいたる広範囲において、マルチビームソナーによる詳細な海底地形データおよびXCTDデータを取得した。加えて、次年度に実施予定の数値モデルによる感度解析の準備のため、今年度はトッテン領域を3-4kmと高解像度化した棚氷要素を含む海氷海洋モデル(COCO)を整備した。大気再解析データ(ERA5)から海面境界条件を計算し、十分なスピンアップ後、1951-2021年の数値実験を実施・完了した。モデルデータを解析し、トッテン沖に衛星観測結果とある程度整合的な定在渦の存在を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、日本・オーストラリアのCOVID-19対策に関連して、南極観測航海を実施できなかったが、衛星データ解析および定在海洋渦を再現可能な数値モデル開発を前倒しで行った。また本研究のデータセットを用いた研究業績はNature系雑誌Communications, Earth and Environmentに掲載され、プレスリリースも行われた。また、研究開始当初は想定していなかったが、本研究のデータと粒子追跡手法を組み合わせることでライギョダマシの卵・仔魚の輸送シナリオについて新たな仮説を提唱し、国際学術雑誌Fisheries Oceanographyに掲載された。当初の計画を変更し、順調に成果を得ているため上記の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現場/衛星データ解析の継続および開発された数値モデル研究による感度解析を主軸に研究を進める。特に今年度は、海鷹丸による南大洋観測を実施し、定在海洋渦の循環強度、渦による熱フラックス推定を可能にする係留系観測の準備を行う。
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