研究課題/領域番号 |
21H03590
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
岩井 雅夫 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90274357)
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研究分担者 |
堀川 恵司 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (40467858)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 南極氷床 / 鮮新世 / アムンゼン海 / 珪藻化石 / IODP Exp.379 |
研究実績の概要 |
南極大陸縁辺掘削は氷床拡大縮小の直接的証拠と,大気-海洋-氷床相互作用の実証的データを提示し、過去の南極氷床変動史やメカニズムの理解は氷床安定性の将来予測や,南北子午線循環を介した遠隔地への影響を理解する上で極めて重要である。とりわけ鮮新世(533-258万年前)は、21世紀に人類が直面する温暖化地球に比較され、現在と同等の大気二酸化炭素濃度のもと、気温が2-4℃上昇、海水準も、およそ20m高かった。また温暖化に対して南極氷床は脆弱で何度も崩壊を繰り返していたとが、数値計算や南極大陸縁辺掘削(南極半島、ロス海、ウィルクスランド沖など)から指摘されている。しかし,既存掘削結果はロス海棚氷崩壊あるいは東南極の一部崩壊を示唆するものの、西南極氷床完全崩壊の証拠は未だ不完全であり、氷床動態の地域性も未解明であった。 西南極アムンゼン海周辺は,現代の温暖化に対し最も顕著に氷床量が減少しており、南極氷床完全崩壊の証拠が最も顕著に表れると期待される海域で、IODP Exp.379航海で掘削が実施された。研究代表者は珪藻古生物学者として乗船研究に従事、古地磁気や放散虫化石研究者と協力のもと年代モデルを構築、これまでにない堆積速度を有するユニークな堆積物であることを明らかにした。また共同研究者は堆積物研究者として乗船、色味や帯磁率が岩相の特徴をよく反映していることを明らかにした。そこで複数の古地磁気逆転層準に着目し、確度・精度の高い対比のもと西南極氷床・東南極氷床の相違や位相を明らかにすべく、本研究を開始した。初年度は、3.6Maのイベントに着目し、珪藻化石の定性分析(スメアスライド観察)を実施、海進期堆積体・高海水準期堆積体が認定できることを明らかにした。複数開催されたオンライン会議に参加、研究成果を発表してきた。Proceedings of the IODP, 379が刊行され、4編の論文が公表された(2021年2月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は試料処理に時間を費やし, 鮮新世前期2層準(3.33Ma, 3.60Ma)の試料処理をほぼ終え,予察的検鏡をすすめ、珪藻化石の定性分析(スメアスライド観察)により、海進期堆積体・高海水準期堆積体が認定できることを明らかにした。また大量の氷河性粘土や岩屑が含まれる試料の前処理にはさまざまな困難が立ちはだかったが、試行錯誤のもと、定量分析用スライドの作成とデータ取得法を確立した。鉛同位体測定試料の準備もすすめられ、一部試料は珪藻化石分析用に共有された。 複数開催されたオンライン会議に参加、予察的結果を報告するなど共同研究者らとの情報共有をすすめてきた. コロナ禍の影響をうけ、深層学習による自動同定システムの導入は見送り繰り越し手続きを行なったが、研究の進展には影響せず、むしろ検鏡に専念でき定量的データの蓄積が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は, 1) 鮮新世後期の2層準(4.30Ma, 4.63Ma)についても定量分析用試料処理をすすめる. 2) 鮮新世の2層準(3.33Ma, 3.60Ma)について珪藻・鉛同位体の定量分析を順次進め,海進期堆積体・高海水準期堆積体を区別,後背地の様相について評価を試みる. 3) 色反射率・帯磁率など非破壊連続物性データより,堆積性サイクルを抽出,酸素同位体標準曲線との対比を検討,軌道要素年代層序の構築を試みる. 4) IODP Exp. 379乗船研究者や他関連公開乗船研究者との情報交換・意見交換を進める.
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