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2021 年度 実績報告書

深層学習を使った気象場ダウンスケーリングと大気環境予測

研究課題

研究課題/領域番号 21H03593
配分区分補助金
研究機関気象庁気象研究所

研究代表者

関山 剛  気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (90354498)

研究分担者 梶野 瑞王  気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (00447939)
福井 健一  大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80418772)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード機械学習 / 数値天気予報 / 移流拡散シミュレーション / 高解像度シミュレーション
研究実績の概要

採択時の研究計画調書に記されていた初年度の研究計画をほぼ完全に実施することができた。
U-netやResNetの技術を組み合わせて深層畳み込みニューラルネットワークを構築し、風向風速ダウンスケーリングに特化した超解像システムを開発することができた。その動作テストとして、気象庁の20km全球解析値と5kmメソ解析値を教師データとして関東平野周辺のダウンスケーリングを試み(水平解像度20kmから5kmへの6時間毎ダウンスケーリング)、ヨーロッパ域を対象とした先行研究と同等の精度を出すことができた。
この深層学習超解像のシステム開発と同時進行で、次年度以降の本番実験に使用する高解像度教師データの作成も終えることができた。教師データの作成には過去10年間の気象庁5kmメソ解析値を初期値および側面境界値として用い、気象庁現業メソ予報モデルの水平解像度を5kmから1kmに高解像度化して(ただし計算領域は関東地方・中部地方東部・東北地方南部に限定して)実施した。計算には気象研究所のスパコンで4ヶ月を要した。
機械学習を用いた気象場ダウンスケーリングの先行研究では気温や降水量を対象にすることがほとんどで、風向風速を対象にしたものはベクトル場を対象とする困難性のため極めて少ない。また、他の先行研究では全球データ(水平解像度10-50km程度)をメソデータ(水平解像度3-10km程度)に変換することが目標となっており、本研究のようにメソデータからメソデータ(水平解像度1km以下;地上の複雑地形や乱流の影響を極めて大きく受ける)への変換は実施されたことがなく、先行研究が存在しない。しかしもし成功すれば日常生活に身近な地域ごとの風の流れを小さな計算機負荷で知ることができるようになり、技術的な重要性は大きい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究代表者が一昨年度に開発していた地上気温のダウンスケーリング超解像システムをプロトタイプとし、それにU-netやResNetの技術を加えて、風向風速ダウンスケーリングに特化した深層学習超解像システムの開発を順調に済ませた。その動作テストとして、気象庁が保有する過去5年間の20km全球解析値と5kmメソ解析値をそれぞれ教師データとして関東平野周辺を抜き出して使用した(20kmから5kmへの6時間毎ダウンスケーリング)。そのダウンスケーリング結果はヨーロッパ域を対象とした先行研究と同等の精度を出すことができた。
この深層学習超解像のシステム開発と同時進行で、次年度以降の実験の教師データとして使用する気象場の格子点ファイル(これを気象解析値と呼ぶ)を作成した。作成には過去10年間の気象庁5kmメソ解析値の3時間毎データを初期値および側面境界値として用い、気象庁現業メソ予報モデルの水平解像度を5kmから1kmに高精度化して(ただし計算領域は関東地方・中部地方東部・東北地方南部に限定して)実施した。計算には気象研究所のスパコンで4ヶ月を要した。この10年間分1時間毎の気象解析値を次年度の教師データとして使う。
これらはすべて当初計画通りである。

今後の研究の推進方策

初年度に作成した10年間分1時間毎の水平解像度5kmおよび1kmの気象解析値を教師データおよび検証データとして使い、風向風速ダウンスケーリングに挑戦する。他の先行研究の気象場ダウンスケーリングでは全球データ(水平解像度10-20km程度)をメソデータ(水平解像度3-5km程度)に変換してきたが、本研究のようにメソデータからメソデータ(水平解像度1km以下;地上の複雑地形や乱流の影響を極めて大きく受ける)への変換は実施されたことがなく、極めてチャレンジングである。ダウンスケーリングに用いる深層学習超解像システムの精度向上、特にベクトル場の取り扱い方法の改良が必要になると考えられ、情報科学を専門とする研究分担者・研究協力者とともに最新の知見を取り入れてシステム開発・改良を進める。
また同時に、ダウンスケーリングによって作成した高解像度の風向風速場を使って大気微量成分の移流拡散シミュレーションが自由に実施できるように、独自の境界層ラグランジュモデルの開発を進める。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 放射性物質拡散予測モデルの不確実性の低減と活用2021

    • 著者名/発表者名
      近藤裕昭, 岩崎俊樹, 佐藤陽祐, 関山剛, 滝川雅之, 新野宏, 鶴田治雄, 山澤弘実, 塩谷雅人
    • 雑誌名

      Journal of the Atomic Energy Society of Japan

      巻: 63 ページ: 318~320

    • DOI

      10.3327/jaesjb.63.4_318

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 大気エアロゾルの確率予測、データ同化、そして深層学習2021

    • 著者名/発表者名
      関山剛
    • 学会等名
      第38回エアロゾル科学・技術研究討論会
    • 招待講演
  • [学会発表] 深層畳み込みニューラルネットワークを用いた気象場の総観スケールからメソスケールへの統計的ダウンスケーリング2021

    • 著者名/発表者名
      関山剛
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2021年大会
  • [学会発表] 深層学習を使った気象シミュレーション代理モデルの可能性2021

    • 著者名/発表者名
      関山剛
    • 学会等名
      「富岳」成果創出加速プログラム防災・減災に資する新時代の大アンサンブル気象・大気環境予測2021年度成果発表会

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公開日: 2022-12-28  

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